大型調達を経て、ヤマップが目指すこれからの世界

ー これからのヤマップについてお聞きしたいと思います。今後どのような展開を描かれてますか?

出資いただいている立場ですので、上場することは当然の通過点として捉えています。
福岡のベンチャーでマザーズに上場したホープ(代表取締役:時津 孝康氏/自治体の財源確保支援事業を展開)は、周りの起業家たちにとても良いインパクトを与えました。私たちもそれにしっかりと続きたいと思います。


しっかりと事業を創り上げ会社に体力がついた暁にはCVC(Corporate Venture Capital)のような機能を作って事業シナジーのある起業家への投資はもちろん、私たちが応援していただいたのと同様、福岡・九州のベンチャー企業を支援して恩返ししていきたいとも考えています。


事業としては、現在進めている「YAMAP」というアプリを通じて、自然・登山・アウトドアを軸にしっかりと創っていきながら、それにまつわる事業展開を考えているところです。例えば観光などに広げていくという事業計画もあります。


私たちのビジネスは「コミュニティ・ビジネス」だと考えています。コミュニティを大事にして、どう活性化して健全な場を創るかを第一に考えて行きたいと思います。職場や家族とはまた違う、同じ趣味を持つ人たちが集まる場は今後さらに重視されていくことになるでしょう。「コミュニティの可能性」を追求していきたいです。


ー 事業の収益化についてはどう考えておられますか?

現状はまだまだサービス創り、コミュニティ創りを優先しています。引き続きユーザーさんには無料で使っていただくスタイルを継続していきます。そのためにも今回の資金調達は非常に重要でした。


収益化の可能性としては、登山・アウトドアユーザーにリーチしたいという法人も多く存在しますので、タイアップをたくさんしていきたいと思っています。例えば、スマートウォッチやスマートフォンそのもののウィジェット開発や、アウトドアの文脈でブランティングしていきたい企業様のタイアップ記事などです。


5年間、アプリのビジネスやってきてつくづく感じることは、アプリそのものに課金するということの難しさです。例えば「お茶1杯100円です」と言われると、触れられるし飲むことができるので100円払っていただき易いかもしれませんが、「アプリで85円です」となると途端にダウンロードしていただけなくなってしまう。


アプリの課金でうまくいってる有名企業ですら、有料会員率は3%~5%と言われています。登山人口はいま700万~800万人くらいいると言われていますが、もし3分の1の方に使っていただいたとしても200~300万人。課金がその1%で3万人。3万人の方に500円毎月払って頂けたとしても事業として大きく拡大はしません。ですのでデジタルサービスに課金することへの優先順位は高く置いてはいません。


一方で、「リアルなモノづくり」については大きな可能性を感じています。
登山・アウトドア用品の開発、ガイドマッチング、登山・アウトドア用品のC to Cサービス、は十分可能性があると考えています。


「登山・アウトドアに特化した領域で、きちんとリアルビジネスで収益化を目指していきたい」というのが、当面は収益よりもサービス開発、と言っている背景です。


ー 登山・アウトドアというのはリアルな活動そのものですからね。
アプリを入口にしてリアルなモノや体験を提供することで収益化していくというのは、特定領域に絞ってコミュニティを形成できているからこその可能性かもしれませんね。

そうですね。時代とともに「モノづくりの在り方」も変わってきていると感じています。
大量生産・大量消費ではなく、ヤマップの場合は「山コミュニティに共感されるプロダクトづくり」をしています。ユーザーのみなさんと一緒に作り、リリースをしたあと使っていただいた声から改善し、第2弾をすばやくお届けするというサイクルを大事にしていきたいです。


コミュニティはモノづくりととても相性がいいと思っています。
2年半ほど前、登山パンツを「久留米絣(くるめかすり)」という生地で作りました。1本2万円以上して結構高価なのですが、累計で300本以上買っていただけました。久留米絣というのは福岡県の伝統工芸の生地なので、大量生産には向いていません。
にもかかわらずコンスタントに着実に買っていただけるのは、コミュニティがあるからこそ可能なのだと思います。


コミュニティに対して「こんなコンセプトで作りました」と想いを載せて紹介していく。
「ほぼ日」さんが良い例だと思います。メディアでありコミュニティであるほぼ日さんが「腹巻き」や「手帳」などユーザーがよく使うものをリデザインして届けています。そういう感覚でのモノづくりは大きな可能性があると思っています。


ー 伝統産業とコラボするという文脈でも、地方を拠点にしている強みと言えそうですね。

そうですね。私自身がずっと久留米絣でできた服を着ていたので、生地がすごく良いというのは知っていました。


熊本で震災があった時、ヤマップとして九州を応援するという気持ちから「メイドイン九州にこだわってモノ作りをするのが自分にできることだ」という想いでやってみたことだったのですが、予約開始3日で予定してた80本が完売したことで、「コミュニティ × モノづくり」の可能性を確信できました。


ー 最近は街を歩いていても、登山とかアウトドア系の用品を身に着けている方も多く目にしますね。

アスレジャー(アスレチックとレジャーを組み合わせた造語)という言葉が定着してきましたね。機能性の高いアパレルが求められるようになり、ビジネスパーソンがリュックを背負っているという姿は、昔は見ませんでしたが、いまではよく見るようになりました。
靴もしかりで、アシックスが革靴を作ったりしています。とてもいい流れだと思っています。ノースフェイスやパタゴニアなどもかなり売れていますが、山に行く人だけが買うのではなく、町で着るために買う人もいますよね。


かっこよくて機能性が高ければ、登山・アウトドアに限定せず裾野は広がっているのではないかと思います。


ー アウトドアブランドはデザインや機能性はもちろん、プロダクトに思想があり、「それが好きだ」ということで買っている方も多そうですね。

もともとコミュニティーを大事にしていきたい、ということからヤマップの事業は始まっているので、モノを作るときにも「そもそもなぜヤマップがやるのか?」という観点からいつも始まるんですね。いちいち製品に想いを込めないといけない(笑)。


プロダクトありきではなく、その背景にある思想が必ずある、というアプローチがヤマップのプロダクトの特徴になっていけばいいなと思っています。


ー 今後の展開が楽しみですね。

今はまだよちよち歩きなので、ここからの展開をぜひ見ていてください。

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会社情報

所在地福岡市博多区綱場町2-2 福岡第一ビル6階
設立年月2013年7月
従業員数55名
関連業界レジャー/メディア/アプリ
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