第2部 で事業の拡大を決意したFusic。その後の成長プロセスを深掘りした。)

もっと高みを目指したいから、「成長スピードを上げる」

— 先ほどのお話は創業4、5年目でしたね。現在、創業14年なのでその間10年の歴史があると思うのですが、事業拡大を決意されてから、会社の中でどのようなステージがありましたか?

創業から10年経った時に、会社をもっと伸ばすという意思決定をしましたね。

— 成長のスピードを上げる、ということですか?

そうですね。会社として「日本を代表する福岡の企業になる」というビジョンを明確に定めて、もっと会社を大きくするぞと。会社は大きければ良いというわけではないけれど、10〜20人でそんな会社になれるわけではないので、せめて100人から200人の規模にはしないといけない、と。要は拡大基調というか、ちゃんとでっかくビジネスやっていくって決めたのは10年経ってからですね。

— どういった背景でその意思決定をされたのですか?

自分でもそこそこ頑張っているつもりではあったし、社員数も20人ぐらいまでには増えてきて。仕事もそれなりにいただけるようになってはいました。ただ、本当にこのままで良いのだろうかという疑問もあったんです。その時、僕は34歳ぐらい。10年後に44歳になったときに、このペースで会社経営を続けていたら後悔するだろうなと。

— 「後悔するかも」と思われたのは、起業した当時に思い描いていた成長のスピード感よりも遅いと感じたからですか?それとも、「もっと高みを目指したい」という気持ちが芽生えたからですか?

どちらかと言うと、高みを目指したいという感じですかね。創業してからひたすら仕事に打ち込んではいたんですけど、10年目に過去5年くらいを振り返ると、どれも延長線上にしかないような気がしたんですよ。もうちょっとギアを上げたいなと。まぁ、それも「好奇心」なんでしょうね。

— なるほど、「好奇心」。これはFusic、そして納富さんご自身のキーワードですね。

そうかもしれないですね。

— 「この先はどうなっているんだろう?」、「会社がそのステージに行ったらどういう世界が見えるんだろう?」。そんな好奇心ですかね。

それもあるし、「いろんなチャレンジをしたらどんな風になるんだろう」とか。あとは、「自分の能力はどれくらいなんだろう」とかですね。

明確な事業目標の設定、社員数も3年で倍増

— 結構重要な意思決定ですね。「成長スピードのギアを上げる」っていうのは。どういったところから変えていきました?

まずは、目標を明確に掲げました。売上とか。それまでは「なんとなく伸びてます」って感じだったんですけど。また、ここ1、2年は組織づくりに注力して、マネージャーやリーダーに権限移譲をしていますね。

— 採用にも変化は現れましたか?

採用は、以前に増して積極的になっていると思います。

— 採用する人材の特性なども変更されましたか?「よりこういう人材を採るようになった」とか。

そこはずっと変わらないですね。ですけど、来る人の質は上がったと思います。

— すごい。それは、アクティブに採用活動をした結果ですか?あるいは、採用の打ち出し方を変えたんですか?

会社がそれなりに見栄え良くなってきたからだと思います。採用はずっと僕が第一線に立ってやってきたので、人材の質には一切妥協していないですし、昔から力を入れていました。応募してくる人の母集団の数とクオリティは、少しは上がったと思いますね。

— 今の社員数は何名ですか?

今、ちょうど40名を越えるくらいです。この3年で倍になりました。

— この3年で一気にアクセル踏みましたね。 社員が倍になるというのは割と大きな変化ですね。

そうですね。創業10周年で「日本を代表する福岡の企業になる」という目標を掲げたときに20名ぐらいだったと思うので。このペースでいくと、数年内に社員60〜70名とかになるので、それなりに大きな変化ですね。

— メンバーが増えたということは業績も伸びたということだと思います。「メンバーが増えたから業績が伸びた」のか、あるいは「業績が伸びたからメンバーを増やすことができた」のか、どう思われますか?

両輪みたいなものなので、どっちが先かっていうのはよくわからないですね。ただ、確実に言えることは、人が増えてきて、いろんなことにチャレンジできるようになってきたとは思っています。昔、よく言われたことがあって、「今日の飯と明日の飯を両方考えなさい」と。今までは「今日の飯」ばかりをやってきました。今では、いろんな投資を含めて、「明日の飯」、「明後日の飯」に注力できているんじゃないかと思います。そういう意味では楽しみだなと思いますね。

— それができるのは、まさに人が増えたからこそですね。

そうですね。それは大いにありますね。

最先端の技術トレンドの追求と、自社サービス開発

— いろんなチャレンジができるようになったとのことですが、例えばどんなチャレンジをされていますか?

技術トレンドに関して、最新のモノを追い続けていると思いますね。超最先端とまでは言えないものの、それに近いことはやっています。

— それは人が増えてできるようになったことですか?

最新の技術トレンドを追い続けるチャレンジは、創業当初からですね。そこはまた「好奇心」ということになると思いますけど。エンジニアってそこの技術的好奇心をくすぐらないとモチベーションが湧かないんですよね。僕自身もそうだったし。最新の技術を使うということは、いろんな仕事の中でも非常にプライオリティが高いところに置いています。「こういった技術を使いたい」っていうのがあって、そのマインドドリブンで仕事を取ってきたりとか、そういうこともよくあります。それは「余裕が出たから」ではなく、最初からプライオリティ高く実践している取り組みだから、ですね。

— では、成長のスピードを上げるためにやっている具体的なチャレンジを教えていただけますか?

お金になるかわからない自社サービスの開発とかですかね。IoTのサービスとか始めていますけど、カネになるかわからないサービスに、コストでいうと数千万ぐらい投資していますね。

— 自社サービスをやっていく意思決定はどういった経緯で生まれたんですか?

「ITでレバレッジをかける」という点で、自社サービスの方が影響度は大きいなと。また、それに加えて、自社サービスでこそ得られる知見もあると思っています。会社を成長させていく上で受託開発を辞めるつもりはないのですが、一方で、自社サービスも両方やっていきたいと思っています。

— 受託開発と自社サービスの双方に取り組むことで、いろんな志向性のエンジニアにとって魅力的な企業として映りますね。

そうですね。新しい技術にチャレンジしたい人、自社サービスを開発したい人、それぞれに活躍できる環境を用意できるようになっていると思います。

経営目標は、「日本を代表する福岡の企業になる」

— ここまでは過去のエピソードについてお聞きしましたが、今後の展望についてお話いただいてもいいですか?

まず、会社のビジョンは先ほどお話したとおりです。日本を代表する福岡の企業になる。定量面では、社内で30%成長を続けるといっています。

— 30%というのは、だいぶアグレッシブな成長角度ですね。

なぜ30%なのかというと、10の10乗根って1.25〜1.26ぐらいなんですよ。毎年25%成長すると10年で10倍になるんですよね。

— さすが、理系的発想ですね(笑)。私の前職で成長率を決めていた時は、もっとアバウトでした。定性面ではいかがですか?

定性面だと、IoTやAIなどに注力しようと思っています。そういった技術をいち早く取り入れたい。なんだかんだ九州は多少遅れてしまっているところもあると思うので、少なくともそこではトップランナーとして走り続けたいですね。
福岡で会社をやっている理由っていくつかありますけど、環境が良いとか、子どもを育てやすいとか。僕も子ども4人いるし、家族もいるしとかあるけど。実は、それとは別に大きな理由があって。「意地」みたいなものなんですけど、東京の人たちが「地方」って言う時って見下したニュアンスも含んでることもあるなと思っていて。

— そうなんですよね。そういうニュアンスを感じることもありますね(笑)。

そこを「見返したい」みたいなのはあるんですよ。福岡って環境良いですよねっていうのは良く言われるんですけど、正直、ビジネスやるなら東京が一番良いんですよ。あれだけ企業が集まっていて、お金もあって。実際、ビジネスは東京でやるのが一番効率的だと思うんですよね。

確かに東京でやるのも良いんだけど、福岡で生まれて、ずっとやってきているので。だからこそ、「日本を代表する企業になる」ではなくて「日本を代表する福岡の企業になる」っていうのがカギで、この福岡にいながら日本を代表する企業になると。

東京一極集中の構造に一石を投じたい

アメリカが強い理由って、その一つは人種の多様性にあるとは思うんですけど、やっぱり各都市が自立しているんですよね。全員ニューヨークを向いているわけじゃなくて、ボストンはボストンだし、シアトルはシアトル、サンフランシスコ、シリコンバレーもそれぞれなんですよ。それぞれ政治や文化、学術、産業が分散しています。一方で、日本は99%が東京に集中している。文化も芸術も全部そうですよね。それって微妙だなって思っているので、そこに一石を投じるためにも、僕らがここ福岡で気を吐くしかないんですよね。

— これから人口減少が加速して、100年後、日本という国に東京ぐらいしか都市が残っていなかったらつまらないし、悲しいことですよね。

そうですね。なんだかんだね、やっぱり高校で優秀なヤツは東大に行くし、大学で優秀なヤツは就職で東京に行くんですよね。それは、福岡にチャレンジングな気質を持った優秀なヤツが残りにくい環境があると思っていて。

— 確かに、チャレンジャー気質は少ないのかもしれないですね。

そう。だけど、僕らがここ福岡でチャレンジャーを受け入れる会社になったら、東京に行かずとも、好きな街で家族もいる街で、「世界相手に仕事ができる」となったら、都市のポテンシャルって上がると思う。場合によっては東京から東京生まれ東京育ちの人が、福岡に来て働きたいという人も出てくるかもしれないし、そういう状況にすることは可能だと思っています。そうしたら日本はもっと強くなると思う。

QOLを追求しつつ、仕事には妥協しない人と働きたい

— U・Iターン希望者だからこそ期待したいことってありますか?

「地方」だと思ってあなどられたくはないですね(笑)。

— なるほど(笑)。一緒にチャレンジできる人材を集めたいですよね。

そうですね。なんか、東京に疲れたので福岡に帰りたい、みたいな人は正直いらないかなと思っています。ただ、やはりQuality of lifeじゃないですが、家族と過ごすとかどこに住むかは大事だと思うので、そういうことは大切にしつつ、でも「仕事には妥協しない」という人には来てほしいと思いますね。

「好奇心」が強い人材求む。若手も積極登用中。

— 最後に、社風というか文化、Fusicならではの働き方っていうのはありますか?特殊な制度とか。

好きな本を買って良いとか、参加したい勉強会に参加して良いとかはありますけどね。ただ、福利厚生を謳ってもあまり意味がないと思うので。

— 文化的なところで言うとどうですか?Fusicのメンバーってどういう人たちが多いですか?

学ぶことに貪欲な人は多いかもしれないですね。それは「好奇心」が強いということかもしれませんけど。

— 面接では「好奇心」を持っているかを見られますか?

そうですね。僕は好奇心みたいなところは見ますね。好奇心ってなかなか後天的に醸成できないものだと思うので。スキルは後から努力次第でなんとかなるものですけど、好奇心みたいなものっていうのはどうにもならないので。

— 社員の方の平均年齢ってどれくらいですか?

30歳くらいです。

— 結構若いですね。若い人材を採用していきたい方針ですか?

僕は、社員の平均年齢を若い状態に保ちたいと思っています。よく社員からも「新卒採用すると教育コストかかるわ」とか「即戦力の中途を採用すべきだ」って言われるんですけど、僕は「うるさいボケ」って言ってて(笑)。

— なるほど(笑)。

平均年齢が高まると組織は絶対停滞するので。それに、会社を社会の公器と捉えた時にも、やはり新卒を採用することが必要だと思っている。ちゃんと若者を育成していく、という意味で。

— 先ほどの成長戦略のお話の中で、組織を強化したというお話がありましたが、マネージャーやリーダーにも若い人材を登用しているんですか?

そうですね。20代のマネージャーもいるし、新卒4年目でリーダーをやっているメンバーもいますね。

— 若くても実績を出せたら登用される会社ですね。

はい。むしろ、同じ能力だったら若い人に任せた方が良いとすら思っています。

人生なんてほんの一瞬だからこそ楽しく働く

— 「これだけは最後に書いておいて欲しい」ということはありますか?

そうですね。結構達観しちゃったような価値観の話になりそうなんですけど。

— ぜひ、聞かせてください。

僕は、仕事も一つの暇つぶしだと思っているんです。宇宙の歴史は137億年もあって。

— スケールが大きな話になりましたね(笑)。

恐竜が誕生したのが3億年前なんですよね。137億年の歴史を仮に1年と定義した場合、元旦が137億年前。大晦日を今だとするならば、恐竜が生まれたのは12月下旬。人類が誕生したのが400万年前なんですよね。これって、大晦日の21時半くらいなんですよ。紅白歌合戦がちょうど盛り上がってきたくらいに、ようやく人類が生まれた。キリストが誕生したのは、23時59分55秒とか。もうあと5秒で除夜の鐘だ、みたいな時なんですよ。ゆく年くる年がもう始まっている時間ですよね(笑)。僕らが生まれたのは12月31日の23時59分の59.8秒とか。もうそんな感じですよ。あと0.2秒残すばかり、みたいな(笑)。

— 本当に一瞬ですね(笑)。

宇宙の歴史から考えると、僕らの人生なんて0.2秒とかそんなもんなんですよ。そこで、何億儲かったとか、ビジネスで大成したとか、鼻くそみたいなもんだと思ってるんです(笑)。

— だんだん、しょうもない話に思えてきちゃいますね(笑)。

この話から導き出す結論が何かというと、「楽しんだモノ勝ち」だと思っています。なので、ビジネスを「暇つぶし」とまでは言わなかったとしても、「楽しむモノ」とはどこかで思っていますね。いろんなことをやってみたいし、せっかくやるんだったらガッツリやりたいと思うし。

— 社風もそんな感じですか?楽しんでやろうぜ!というような。

 「せっかくやるなら全力でやろうよ」ってところはありますね。社風も。

— 一本の筋がとおったお話で、「なるほど、だからこそFusicはこういう会社なんだ」という納得感がありました。本日はありがとうございました!

会社情報

所在地福岡市中央区天神4-1-7 第3明星ビル6F
設立年月2003年10月
従業員数107名
関連業界システム開発
urlhttps://fusic.co.jp/
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