地方移住で人脈が濃くなった理由

ただ、U・Iターン検討者の多くが、「地方に移住すると置いていかれるかもしれない」って恐れているんですよ。

— それはどういう不安なんでしょうか?

東京で築いてきた人脈を捨てるのが怖いんですよ、友達とか。でも、僕の感覚だとそんなことは全くないんです。人脈が倍に広がって、かつ、薄いつながりがなくなって、濃くなりました。
東京から福岡へ、エリアを大きく移動したことで、新しい出会いがあります。中堅都市だから、魅力的な人たちも沢山いますよ。人脈は倍に広がっても、時間は有限なので濃いところだけが残ります。福岡〜東京間はたった3時間もあれば移動できるわけですが、たったそれだけ移動したぐらいで切れる関係っていうのは、そんなに重要ではないはずですよね。それでも残る関係が真の人間関係だと思うんですよ。

— 確かにおっしゃる通りです。

物理的に距離が離れてたとしても会いたい人たちは、ものすごく大事な人たちなんです。人生において、そういう人間関係を大事にするほうが絶対いいですよね?
FacebookやLINEなどのSNSで共時性も上がっていて、脳がつながってる感覚ですよね。LINEを使えば、非言語的な感情までもスタンプで伝えられる。ITもうまく活用すれば、生き方を濃くできると思うんです。距離が離れても、濃い関係の人とはSNSで必要なときにつながれる。どうしてもface to faceで会いたい時にだけ、会いに行けばいい。

— 自分の人生にとって大事な人脈がなくならない時代ですね、移住したぐらいでは。

一方で、福岡に戻ったからこそ出会えた人脈もあります。「1980福岡スタートアップ会」っていうのがあって、株式会社ホープの時津社長、株式会社ヤマップの春山社長、株式会社ボーダレス・ジャパンの田口社長と、僕の4人がたまたま1980年生まれということもあって仲良くしているんです。
この3人は起業家としても尊敬しているんですけど、まさに福岡に帰ってきたから知り合えた友達なんです。出会えて本当に良かったなと思うんですよね。

地方では成功パターンが豊富に存在する

福岡のような中堅都市は、コストが低くて、チャンスが多くて、中期的なポテンシャルがめちゃくちゃ高いエリアだと思っています。福岡ぐらいの規模の中堅都市がしっかり成長していければ、さらにその周辺のエリアの成長も見えてくるかもしれない。だから今、地方で面白いことが起きてるなと思っています。

— 地方だからこそできることにチャレンジするのは面白いですよね。

例えば、グッドラックスリーにおいても、この事業体を東京で立ち上げてもお金は中々集まらなかったと思います。でも、福岡ではゲーム・エンタメ系の産業は成長し得るよねってことで、地方銀行、地方有力企業、個人投資家に応援して頂きました。累計7億円の資金調達の内、地銀系のベンチャーキャピタルから2億円集まりました。

— 地銀のVCから調達することを、東京では発想しないですね(笑)

見つけちゃったんです(笑)。地方では、地方オリジナルの成功パターンがいっぱいあって、東京とはまた違うんですよ。その成功パターンの一つが地銀という存在ですね。地銀や行政との距離の近さが、地方スタートアップの特徴かなって思います。県や市の役所の方から頻繁に連絡がありますよ。

行政との距離が近い福岡

— 行政からどんな連絡がくるんですか?

例えば、「海外のカンファレンスに一緒に出ませんか」というお誘いを頂きます。福岡市、福岡県として出展するブースの中で一緒にグッドラックスリーも出さないかと。一方で、行政に甘えてばかりではなくて、福岡の行政に、海外企業の方が、企業視察の申し出があれば、当社に直接的なメリットがなくても対応するようにしています。

— ウィン・ウィンの関係ですね。

福岡市、福岡県が僕らの会社のために動いてくれるので、僕らも行政のために動く。それぐらい行政の人と密に連携しています。行政の担当者レベルで普段からお世話になっているので、彼らが必要なときに僕らもなにかお手伝いしなきゃなと思います。それが福岡の行政とスタートアップの距離の近さです。

— 東京ではあまり聞かないですよね。

東京で働いているときは、都の職員との連携とかは考えてもいなかったですよ。だから、福岡の行政職員の異動も気になります。スタートアップやコンテンツ行政のために親身に動いている職員さんはどうなったかなとか。高島市長も、スタートアップの経営者たちとの距離が近く、産学官一体で盛り上げていこうという空気を創り出してくれています。一企業に対する感覚と同じ感覚で行政とお付き合いしていますね。福岡は行政のサイズが大きすぎず小さすぎず、ちょうどいいというのもあるかもしれません。

福岡は移動のストレスとコストが少ない

— 確かに、福岡の街のサイズは「ちょうどいい」ですね。

街のサイズの観点でいうと、「今から来れる?」みたいなコミュニケーションが成立するサイズ感です。「プライベートの生活エリア」と「仕事で通うオフィス街」の行き来が大体10分圏内なので、休日にちょっとした仕事の予定が入ったとしても、「オフィスでちょっと打ち合わせしてくるね」と、プライベートの合間の1時間を割くだけで対応できます。

— 移動のコストとストレスが少ないですよね。

さらに、生活コストが安いので福岡・東京間を毎月往復するための交通費も捻出できますよ。だから、福岡規模の中堅都市は、コストが低い分、リスクが小さくて、その割にリターンが大きいんです。

地方経済は連携して大きな経済圏を!

— チャンスしかないですね。柱となる産業が立ち上がるともっと魅力が高まるでしょうね。

ITやコンテンツで産業の柱を生み出せるはずですし、産み出すべきです。。産業って企業の集積ですよね。愛知はトヨタ、広島はマツダじゃないですか。京都だと京セラ、日本電産、任天堂。IT・コンテンツでも、同じような規模の産業を産み出していくのが、この21世紀の課題です。それをやるのが、20代〜30代の僕らですよね。だから、「地方出身者はそろそろ生まれ故郷に戻ってください。東京はあなたがいなくても回っていきます」と言いたいんです。

— 福岡の産業がもっと成長すれば、熊本・佐賀など周辺エリアにもUターン、Iターンしやすくなりますね。

佐賀も熊本も、博多駅からJR、新幹線で最速40分程度です。福岡を中心とした一つの都市圏なので、もっと連携した方がいいはずです。

— 僕は大学が筑波大だったんですが、つくばエクスプレスができてから街がかなり発展しました。東京とのアクセスがよくなったので、ベッドタウンとしても機能しています。

佐賀・熊本は福岡とともに発展するぞというビジョンがありえるってことですよね。例えば通勤をサポートしてあげたり、子育て世帯が住みやすい環境をつくるとか、定期券を安くするとか。東京とその近郊エリアが一緒になっている経済圏と同じ構造を、福岡を中心としてつくる。東京での感覚だと普通だけど、まだ地方では起きていないことをやるってことですね。佐賀・熊本から福岡への通勤時間は、東京都市圏の感覚だと普通です。

— 遠方から通勤する場合、例えば週2日は在宅勤務OKだったら、そのストレスも減りますね。それもIT産業だからこそできる働き方です。

そうですね。これから生活の質を追求する時代に転換していく中で、地方中堅都市で働くことは有力な選択肢の一つになり得ます。生活の質を担保した上で、キャリアも積むことができる。万一、地方中堅都市での生活が自分に合わなければ、また東京に戻ればいい。だから、「一度試してみたら?」って思うんです。家の賃貸契約の更新期間まで、「一度住んでみて試せばいいじゃん」って。別に海外移住ほど、大変な話をしているわけではないですし。

— 別に片道切符ではないですしね。東京の会社の経営企画部長が、地方企業だとCFOになれたりする。そこで得た経験って東京に戻っても役に立ちます。

ただ、福岡の生活を一度経験しちゃうと、東京には戻れないってことが多いですね(笑)。僕も最初は、「東京に戻ることもあるかもな」と思ってましたが、「もう東京には戻れない」って思っています。満員電車とか恐怖になってきてますよ。慣れていたときは普通でしたけど、一度離れてみると、満員電車のストレスは半端じゃないなと感じます。寿命が縮まりそうです(笑)。

— 本当にそうですよね。

東京一極集中を解決する大きな流れに乗って欲しい

人々の生活の質という側面で捉えると、東京一極集中は課題です。そして、その課題に対する解を見つけるという大きな流れが動き出しています。転職や引っ越しを検討している人は、一度、地方企業で働いてみて、一旦、その大きな流れに乗ってみるのはどうでしょうか。
かつて、製造業の有力企業が存在した地方都市は元気でした。なぜ今、地方都市に元気がないかというと、製造業が地方経済を牽引するモデルが成立しなくなってきたからです。でも、ITやモバイルの産業は、まだまだ伸びますよ。IoTなんかも含めて地方の産業を活性化すれば、地方都市はきっとまた元気になる。IoT・人工知能・ロボットなどの分野と、地方の既存産業の掛け算は、地方経済復活のヒントになると思います。

— 東京一極集中に課題意識を抱いた人からどんどん移住してほしいですね。でも、地方に産業・雇用の受け皿がないと移住しようもないから、「その受け皿となりえる産業の立役者になりませんか」っていう話しですよね。

今は、この20〜30年で見たときの初期の変革期かなと思います。この流れに乗るとおもしろいですよ。企業経営が地方に及ぼすインパクトって、ものすごく大きいです。国家の衰退に抗えるのは企業の活力だと思っています。地方にいながら、アジア、世界を見据えて、事業を展開していく。僕ら企業が、足元の地方経済、アジア経済、世界経済を元気にしていく。そして、福岡で成功したモデルを他の世界中の地方都市で横展開することもできるはずです。

— そういったチャレンジにやり甲斐を感じる人材にジョインしてほしいですね。

はい、そういう気概のある方と一緒に働きたいと思います。

— 本日は有難うございました!

会社情報

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関連業界ゲーム/アプリ/エンタメ
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