「その人らしく最期まで」福岡発ベンチャー
ホスピス住宅100店舗で介護業界に新風を
私たちbeads(ビーズ)は、ホスピス住宅という事業を福岡を中心に西日本に展開していこうとしている会社です。
末期がんや神経難病といった治療困難な状態に陥った方々が、最期の瞬間までその人らしく自分の人生を生きられる「家」のような場所を地域に作っています。
2023年12月に福岡市城南区に1号店をオープンし、2025年3月に2号店を開設しました。私たちが運営するのは、単なる医療施設や介護施設ではなく、住宅施設です。
その中で訪問介護・訪問看護のケアを提供することで、入居者の方々が安心して暮らせる環境を整えています。
社名の「beads」には、数珠のようにつながる縁を表現する意味を込めました。ロゴの楕円形の粒は一つ一つが異なる形をしており、これは多様性とその人らしさを表しています。
私たちだけでなく、地域のドクター、ご利用者様、ご家族など、様々な人たちが一つのチームとなって支え合う。そんな思いを込めて事業を展開しています。
ホスピス住宅を中心とした終末期ケア事業を展開する福岡発のヘルスケアスタートアップです。
住宅型有料老人ホーム「ビーズの家」において、24時間体制の訪問看護・訪問介護サービスを提供し、医療的ケアと暮らしの両立を目指しています。
専門職が連携し、痛みの緩和や日常支援を行うほか、在宅医療チームとの協力により医療面の調整も担います。今後は西日本への店舗展開を見据え、質の高いケア体制の構築と組織基盤の強化に取り組んでいます。
質の高いケアを持続的に提供するため、終末期ケアの専門知識やコミュニケーション技術、チームケアの実践など多角的な独自研修プログラムを開発・運営中です。
さらに、介護記録のデジタル化やAIを活用した健康状態の予測分析、IoTセンサーによる見守りシステムなど最新技術を積極的に導入し、ケアの質向上と業務効率化を推進しています。
私は新卒でリクルートに入社し10年間勤務した後、飲食企業で経営戦略・コーポレート担当役員として7年間経営に携わってきました。
順調にキャリアを積んでいた2020年、コロナ禍の中で体調を崩し、約1ヶ月の入院生活を送ることになります。その病室で、末期がんの患者さんと同室になり、毎日のように話をする機会がありました。
「一人で寝ているのがつらい」「話をするだけでも楽になる」という言葉を聞き、医療や介護の経験がない自分でも、ただ一緒に過ごすだけで誰かの役に立てることを実感しました。
退院時に看護師から「山﨑さんとの会話で本当に救われたと言っていた」と聞き、新しい価値の発揮の仕方があることに気づいたのです。その後、福岡で今の創業メンバー達と出会い、福岡の医療介護の様々な状況を知りました。
福岡にはホスピスのニーズがあるものの、それを創業できる経営者がいないという話を聞きました。「これは自分にボールが来た」と直感し、2022年にbeadsを創業。一人一人が人生の最終段階になってもその人らしい人生の選択肢を選べる社会を作るというビジョンを掲げ、事業をスタートさせました。
私たちの最大の強みは、「家」というコンセプトを徹底的に追求していることです。他社が「病院のような安心安全な場所」や「介護施設」を目指す中、私たちは入居者の方々が本当に「家」と感じられる空間づくりにこだわっています。 建物のデザインから、テーブルの形状、部屋のマークに至るまで、すべてにビーズらしさを表現し、温かみのある環境を作り上げています。また、終末期ケアにおける現場のサービス力も私たちの強みです。 看護・介護の専門性はもちろん、地域連携の多様性を活かし、一人一人に合わせた緩和ケアを提供しています。500を超える医療機関やケアマネージャーとの関係を構築し、九州で最初にこの事業を立ち上げた先行者利益を活かしながら、地域のデファクトスタンダードを確立しつつあります。 さらに、前職での140店舗規模の事業運営経験を活かし、スピード感のある事業展開が可能な点も強みです。単なる拡大ではなく、働くスタッフがやりがいを持ってクリエイティブに仕事ができる組織づくりを同時に進めています。
2030年までに西日本に100店舗(正確には107店舗)の展開を目指しています。これは単なる数値目標ではなく、各エリアの潜在ニーズを積み上げた結果です。
岡山までのエリアで、競合の参入も想定しながら、地域に偏在する高齢者や病気の方々が適切なケアを受けられる環境を整備していきます。
組織面では、ケアワーカーの方々が「ビーズで働くと自分がやりがいを持ってクリエイティブに仕事ができる」と言ってもらえる会社にしたいと考えています。
前職の飲食企業では、労働環境に様々な問題を抱えている飲食業界であっても、「働きがいのある会社ランキング」にランクインする組織を作り上げました。
この経験を活かし、ケア業界でも同様の変革を起こしていきます。最終的には、一人一人が最期まで「その人らしく」生きられる社会の実現を目指しています。
病気になっても、選択肢を持ち、自分の人生を自分で決められる。そんな当たり前の権利を守れる社会インフラとなることが、私たちの使命です。
今後のスピード展開を実現するための根本は、ケアの質にありますが、経営としては大きく3つの課題があります。
第一に「仕組み化」です。100店舗規模への拡大には、属人的な運営からの脱却が不可欠です。
特に数値管理の面では、店舗ごとのエコノミクスを理解し、KPIを分解して現場と連携できる仕組みが必要です。これまでケア業界では一般的でなかった、ビジネス視点での仕組みづくりが急務となっています。
第二に「人材」です。ケアワーカーの採用はもちろんですが、むしろビジネスサイドから仕組みづくりや数字の活用に知見を持つ人材が不足しています。
現場のケアワーカーとビジネス人材が両輪となって回せる組織体制の構築が課題です。
第三に「DX・業務改革」です。介護業界全体でDXが遅れている中、他社に先駆けて圧倒的な業務プロセス変革を実現する必要があります。
しかし、DXに興味がある人材と介護に興味がある人材の重なりが少なく、この分野での人材獲得が大きな課題となっています。
これらはイシューとしては明確ですが、具体的な解決策はまだ見えていません。
だからこそ、外部から新しい視点とスキルを持った方々と一緒に、想像を超えるアウトプットを生み出していきたいと考えています。
キャリアの視点で言うと、「どう成長していきたいのか」だけではなく「自分をどう活かしていきたいのか」という問いかけをしたいと思います。
東京での切磋琢磨に違和感があるなら、いつまで切磋琢磨し続けるのかを考えてみてください。
自分の人生を幸せにできるのは究極的には自分だけです。仕事から得られるものは成長や報酬だけではありません。
「自分は世の中の役に立っている」「自分のおかげで誰かが笑顔になっている」という実感も大切です。
東京では大勢の中の一人かもしれないスキルも、地方では唯一無二の価値になることがあります。
福岡は、都市機能と地域性を併せ持つ稀有な場所です。スタートアップが急速に成長している今、まさに人材が枯渇している状況です。
資本市場が整い始めた福岡で、グロースを支える人材のニーズは高まる一方。知っている人だけが得をする、そんなチャンスが広がっています。
生活の豊かさを保ちながらバリバリ働ける環境は、日本で福岡しかないかもしれません。
まずは遊びに来て、美味しいものを食べて、福岡の魅力を体感してみてください。それが移住への一番の近道だと思います。
入社以前にしていたこと
2006年に新卒でリクルートに入社し、約18年間人材領域でキャリアを積んできました。福岡の大学を卒業後、たまたま就職活動で出会った経営者の多くがリクルート出身だったことがきっかけで入社を決めました。
在籍中は人材系媒体をほぼ全て扱い、大阪、名古屋、岡山、静岡など全国を転勤しながらマネージャーとして組織運営に携わってきました。
特に大阪では10年以上勤務し、日本全体やindeedを通じてグローバルな雇用の社会課題解決に取り組んでいました。
大規模組織でシェアも高い会社だったため、マーケットへの影響力は大きかったものの、その分手触り感は薄く、次第に違う環境でのチャレンジを考えるようになりました。
山﨑とはリクルート1年目から隣の部署で働いており、直接仕事で関わることはありませんでしたが、長年の知り合いという関係性がありました。
入社した理由
福岡に家族がいたこともあり、転職時には地元への移住を検討していました。山﨑に「福岡で何かやってるの?」と聞いたことがきっかけで、ホスピス事業について知ることになりました。
正直、ホスピスについては全く知識がありませんでしたが、話を聞くうちに大きな可能性を感じました。
人材やIT系から多くのオファーをいただきましたが、福岡で同じような仕事をしても解決できる課題は小さくなるだけ。
それよりも、これからの人口動態を考えると今後20年はホスピスの需要が急激に高まることが明白で、「今このタイミングでなければできない事業」だと確信しました。
また、リクルートのような巨大組織では味わえない「手触り感」のある仕事ができることも魅力でした。
正直、給与面での葛藤はありましたが、家族とも相談し、生活が維持できる範囲でシミュレーションを重ね、最終的に全く新しい領域でのチャレンジを決断しました。
今、取り組んでいること
現在は2つの施設を行き来しながら、現場マネジメントと事業推進を担っています。入社当初は役割も不明確で、混乱していた組織を整えることから始めました。
現場の困りごとに対して次々と打ち手を実行し、オペレーション改善を進めています。
特に力を入れているのは地域連携の強化です。病院からの退院調整をスムーズにするため、看護師と社会福祉士を配置した地域連携室を立ち上げました。
医師、看護師、ソーシャルワーカーそれぞれの立場を理解し、医療的な相談にも対応できる体制を整えています。
困難なケースへの対応も重要な仕事です。時には「我々だけでは解決できない」という判断をせざるを得ない状況もありますが、一つ一つの判断が将来100店舗展開する際の基準になります。
2030年の目標に向けて、来年の5店舗同時立ち上げが転機になると考えており、1店舗の立ち上げと運営の「型」を確立することが私の最重要ミッションです。
入社以前にしていたこと
新卒でKDDI(当時の九州セルラー電話)に入社後、2000年頃の福岡・大名でのITベンチャーブームの際に転職。
その後は一貫して新規事業の立ち上げに携わってきました。能古島で養蜂事業を手掛け「ノコハチ」というブランドを立ち上げたり、銀行と組んでファンドから資金調達を行うなど、ゼロイチの事業創出を繰り返してきました。
直近の8年間は、久留米に本社を置く企業で新規事業開発を担当。
農業事業の立ち上げや、ボウリング場を商業施設に建て替えるプロジェクト、フィットネススタジオの立ち上げなど、多岐にわたる事業開発を手掛けていました。
友人の会社の立ち上げ支援やクライアント企業の新サービス開発など、フリーランス的な働き方も経験。
立ち上がった時の達成感に中毒性を感じながら、「とにかく諦めない」ことを信条に、九州を拠点として様々な事業創出に挑戦し続けてきました。
入社した理由
代表山﨑の共通の知人で、前職の人事コンサルタントからの紹介がきっかけでした。ちょうどフリーランスとして活動していた2023年12月、山﨑代表と初めて面談しました。
入社の決め手は大きく2つ。まず50歳を過ぎ、次のキャリアを考えた時、父親が60歳でがんで亡くなったことを思い出し、「残り10年で何をするか」を真剣に考え、その答えが社会貢献性だった。
もう一つは事業の将来性です。これから全国展開していくフェーズで、自分のこれまでの新規事業立ち上げ経験が活かせると感じました。
山﨑のバイタリティ溢れる姿勢と、事業ビジョンの明確さに共感し、ほとんど悩むことなく入社を決めました。「世の中に選択肢を作る」という使命感に、強く惹かれたのです。
今、取り組んでいること
2024年1月に経営管理部として入社し、事業を持続可能にするためのKPI管理を中心に取り組んでいます。
現在は福岡市のFukuoka Growth Nextにあるオフィスを拠点に、南片江と伊都の杜の2施設の数値管理を一手に担っています。
介護・看護など複数のサービスが組み合わさった事業構造は変数が多く、前職までとは違う難しさがあります。現在は多くの作業が手作業ですが、今後拡大していく中で、一人では対応できなくなることは明白です。
そのため、業務の型化とDXを活用した効率化が急務となっています。
海津や丹野といった事業推進メンバーと連携しながら、「答えは現場にある」という考えのもと、現場の声を効率的に吸い上げる仕組みづくりを進めています。
ホスピスという選択肢を世の中に広く認知してもらうため、経営管理の側面から持続可能な成長基盤を構築することが、私の使命だと考えています。
入社以前にしていたこと
新卒でリクルートの代理店に入社し、求人広告の営業からキャリアをスタート。
その後、新卒採用支援会社に転職し、企業の人事部と一緒に採用戦略から内定承諾、入社までをトータルでサポートする仕事に従事していました。
山﨑との出会いは、前職の飲食企業が新卒採用を本格化するタイミングでした。
「なぜ新卒を採用するのか」「会社にとって採用がなぜ大事なのか」を、ビジネス面だけでなく想いの部分まで深く語る山﨑代表の姿勢に強い印象を受けました。
その後1年半ほど個人事業主として、山﨑の人材紹介会社で求職者対応やバックオフィス全般を担当。
また一時期は介護の仕事も経験し、働き手の気持ちと現場の実情を理解しました。当時は千葉に住んでいましたが、場所を選ばない働き方をしながら、次のキャリアを模索していた時期でした。
入社した理由
山﨑から「介護のこともわかるし、採用もずっとやってきたから、一緒にやろう」と声をかけられたのがきっかけでした。
九州に住んだことがなく、新しい土地での挑戦に楽しみを感じ、新婚1年足らずで夫と共に福岡へ移住を決断しました。
入社の決め手は、事業への共感と山﨑代表への信頼でした。介護現場で利用者の尊厳が守られていない状況を目にしてきた経験から、「その人らしく生活できる場所」と「スタッフが働きがいを持って働ける環境」の両立を実現したいと考えていました。
山﨑となら、この難しい課題を実現できると確信していました。
学生時代の飲食店アルバイトで、同じ職場でも人によって働きがいが全く違うことに疑問を持ち、「入る段階でちゃんと話せばズレは生まれないはず」という想いからHR領域でキャリアを積んできました。
ビーズはその集大成となる挑戦の場だと感じていますね。
今、取り組んでいること
2年前の入社以来、採用だけでなく、法務や資金調達に向けたデューデリジェンスの対応や指定申請など幅広い業務を担当してきました。
現在は、2030年100店舗展開に向けた人材戦略の要として、採用から定着・活躍までのトータルな仕組みづくりに注力しています。
最大の課題はリテンション(定着)です。採用は施策を打てば実現できますが、入社後の定着・活躍が重要です。
離職が続いた時期の経験から、マニュアル整備、評価制度構築、そして何より「現場と経営を結ぶ」ことを軸に、組織づくりを進めています。
また、来年からは新卒採用も開始予定です。現場でケアに専念する人材、横断的に管理者を目指す人材、ビジネスサイドの人材という3つのカテゴリーで採用を進めます。
介護・看護の専門職だけでなく、「その人らしく生き続けることを支援する」という想いを持つ人なら誰でも活躍できることを、広く社会に伝えていきたいと考えています。
福岡県福岡市城南区南片江2丁目31-9
5,000万円
非公開
代表取締役 CEO 山﨑大輔
2022年7月
30名
介護・医療
YOUTURNからのコメント
成長と社会貢献が交差する挑戦の場
高尾大輔
YOUTURN 代表取締役 キャリアコンサルタント
ビーズが持つ最大の魅力は、事業の社会的意義と個人のキャリア成長が見事に重なり合う点にあります。
取材を通じて見えてきたのは、リクルート、飲食、IT、農業など多様な背景を持つビジネスプロフェッショナルたちが、「その人らしく最期まで」という理念のもとに結集している姿でした。
特筆すべきは、全員が「手触り感のある仕事」を求めて転職を決断していること。大企業での抽象的な成果ではなく、目の前の利用者や家族の笑顔に直接貢献できる環境がここにはあります。
2030年100店舗という明確な目標に向けて、仕組み化、DX推進、組織構築など、解決すべき課題は山積みです。しかし、それこそがビジネスパーソンにとっての成長機会。
山崎代表が語る「社会が私たちをどう使ってくれるか」という問いかけは、キャリアの本質を突いています。
福岡という地で、社会課題解決の最前線に立ちながら、自身のスキルを最大限に活かせる。ビーズは、そんな稀有な挑戦の場を提供しています。