【イベントレポート】「移住」×「転職」は、人生そのものを突き詰めていく取り組み
「自分らしい生き方を叶えるUIJターン〜地方移住で輝く人たちのキャリアとは?〜」
2024年4月15日に、株式会社せんのみなと主催のオンラインイベント「自分らしい生き方を叶えるUIJターン〜地方移住で輝く人たちのキャリアとは?〜」が開催されました。YOUTURN代表取締役の高尾がゲストに招かれ、「移住転職を考える上で大切な価値観の整理」「準備しておきたいこと」「なぜ福岡が選ばれるのか」「地方移住転職×キャリアの考え方」などをテーマに、パネルディスカッションを行ってまいりました。
「移住転職は、単なる移住、単なる転職ではなく、人生そのものを突き詰めていくような取り組み」と話す高尾。
本記事では、イベントの内容を一部抜粋してお届けいたします。
登壇者
高崎澄香さん(株式会社せんのみなと 代表取締役社長)
東京都出身。大学卒業後、人材紹介会社に入社。リーダーとしてチーム運営全般に従事。ITスタートアップへ転職し、人事業務全般に携わる。2021年3月、夫婦で株式会社せんのみなとを創業。
長嶺将也さん(株式会社せんのみなと 取締役)
東京都出身。英国現地の不動産営業からキャリアをスタートし、2017年7月に日本へ帰国。組織開発、人材開発コンサルタントとしてキャリア構築支援を手掛ける。株式会社せんのみなとの共同創業者として活躍中。
高尾大輔(株式会社YOUTURN 代表取締役)
「今さら東京には戻れない」大都市は出社回帰の流れ
長嶺:コロナ禍以降、地方移住という選択肢が世間に広まったように感じます。ここ数年間、地方への移住転職は増えていますか。
高尾:「増えている」とお答えできると思います。2020年のコロナ禍から一気に福岡に移る方が増えました。「このまま流れが加速していくか」と思いきや、2023年にかけて若干落ち着きを見せました。東京の会社がリモートワークを取り入れはじめたことで、転職せずとも福岡への移住が可能になったためです。
しかし、最近になって流れが変わりつつあります。コロナ禍を経て、大都市の企業は出社回帰の傾向にあります。福岡に住みながらリモートワークで東京の仕事をしていたけれど、「今さら東京には戻れない......」と、移住後にあらためて転職相談に来る方が増えてきたんです。
それは本当に必要か?何を手に入れるかより、何を手放すか
長嶺:大都市から福岡への転職となると、どうしても年収事情が気になりそうです。
高尾:1〜2割ほど年収を下げて転職されるケースが多いですね。それでも福岡に移られる方々というのは共通して、「自身の幸福度を構築する要素がなにか」を捉え直しているように思います。
金銭報酬は、あくまでも一つの要素に過ぎません。“使える時間・通勤時のストレス・家族と過ごす環境”なども含め、ご自身の幸福度を再構築する必要があります。その結果、年収の額面が多少下がってもトータルの幸福度は上がると解釈した方が、福岡での転職を選んでいるようです。
高崎:「幸福」についてご自身の中で定義できているかどうかが、大事なポイントになりそうですね。
高尾:ご自身のマインドセットにはある程度の期間を要すると思います。最初のキャリア面談から転職活動スタートまでに、1〜2年かかる方も珍しくありません。「まだ動くか具体的には決まっていないけれど、情報収集したい」と会員登録いただくケースも多いです。
YOUTURNのキャリア面談では価値観の整理からお手伝いをします。それをキッカケに、現状に対する違和感をより色濃く認識できるようになるんです。違和感のうちは心に蓋をしてやり過ごせても、だんだんと“違和感”から“嫌悪感”へ変化していくんですね。いよいよ無視できなくなり、「もうこの生活は手放そう」と、本腰を入れて動き始めるプロセスがあるようです。
長嶺:具体的にどのように価値観を整理するのか気になります。大事なポイントなどはありますか。
高尾:世の中の“こうあるべき”に自分を寄せていく生き方をしてきた方ほど、「何か違う......」と違和感が出てきてしまうんです。
そんな方が価値観を整理するポイントは、内面で大事にしているものを深く掘り下げてみることです。もし、お金を稼ぐ必要も人と比べる必要も全くなければ何をしたいか。それを実現するにはどうすればいいか。じっくり対話するようにしています。
「何を手に入れるかの前に、何を手放すか」を中心に考えるのもおすすめです。多くの方は、ご家族の事情や子どもの教育環境など、両手いっぱいに荷物を抱えた状態。そこへさらにプラスしようとしても入るスペースがないですよね。まずは今の持ち物から“今後の人生に持っていきたいもの・一旦手放していいもの”に分け、優先順位をつけてみてください。
「お金ってどれくらい必要なんだっけ?」
「子供を私立受験させるのはどうしてだっけ?」
「本当にそれはやりたいことなんだっけ?」
自分自身に一つずつ問いかけていくと、どこに違和感があるのか気づくことができるはずです。
高崎:手放していく中で残った本当に必要なものが、移住してよかったと思う点とどれだけ接合点があるかどうかということなんですね。
福岡はすべてにおいて丁度いい
長嶺:移住先に福岡を選ぶ人は、どんな点に魅力を感じているんでしょうか。
高尾:「すべてにおいて丁度いい」ところかなと解釈しています。都会を味わうこともできれば、すぐ近くに大自然もある。福岡ではコストをかけずして、色々なものに手が届くという感覚を持たれる方は多いです。
生活面では、週末にご家族との予定を複数入れられるようになったという声も聞きます。午前中は近くの海で遊び、お昼からは友達の家でBBQをし、夜はおじいちゃんおばあちゃんに会いに行く。1日に3つほど予定を詰め込んでも平気なほど、暮らしやすい街と言えるでしょう。
経済面でも、今まさに発展している都市という点が挙げられます。2026年末までに、天神エリアでは70棟ものビルが建て替わる予定なんです。それほど一気に社会インフラからスクラップアンドビルドしている地域は珍しく、日本の政令都市の中でも“群を抜いて成長する予感のある街”として魅力があるのではないでしょうか。
移住転職実現に向け、準備しておきたいこととは?
高崎:移住と転職。どちらも実現するために、準備しておいたほうがいいことはありますか。
高尾:「物事を選ぶ基準」は整理しておくといいと思います。高い年収を維持しながらの移住転職にこだわると選択肢がほとんどなくなってしまいかねません。かと言って、年収度外視では経済的に成り立たないかもしれないですよね。
多くの方が現在の収入に合わせた生活をしていると思います。年収がいくらあれば家計が成り立つのか、ご自身が一番いいと感じるバランスがどこにあるのか、一度ゼロベースでシミュレーションしてみると良いでしょう。
高崎:10年、20年先まで見越して移住を検討したほうがいいのか、それとも「一旦移ってみるか」と、ライトに考えたほうがいいのか。どこまで構想して動くのがいいんでしょうか。
高尾:3年周期で考えてみるのは一つの手です。3年ほどでライフイベントが変化すると考え、それに合わせて組み替えられる状態にしておくのがベストかなと。福岡に住むうちに、次は札幌に行ってみたいと感じる可能性もありますよね。
その都度選択肢を選べるように組み替えやすくしておくと良いでしょう。近年、「所有」から「共有」の時代へ移り変わってきています。生き方として、「いかに身軽でいるか」が重要になってくるのではないでしょうか。
長嶺:組み替えやすくしておくとは、例えばどんなことですか。
高尾:「いかに手放すか」にも関わってくる部分ですね。「家」で例えるなら、福岡に移るからと35年ローンの家を購入すると、身動きが取りづらくなってしまう。「賃貸」や「売ることを前提に購入する」という視点も持っておくことで選択の幅が広がります。
仕事においては「雇われることを前提としない」姿勢が大事になってくるかもしれません。仮に独立して4つの仕事を掛け持ちしたとしたら、もし新しいものに興味が沸いても、4つのうち2つは残したまま、新しい仕事を2つプラスすることもできますよね。
仕事も組み替える。ポートフォリオ的に仕事を設計するという感覚は、ますます必要になってくると思います。
高崎:私たちの事業でも、職業としての拠り所を増やしていくことを重視しているんです。それが様々な形で貢献できる自分になっていくということであり、地方を含め、好きなところに住みながら仕事ができる人になることに繋がっていくと考えています。
長嶺:準備段階では情報収集も大事ですよね。おすすめの情報収集の方法はありますか。
高尾:一番は「現地で過ごしてみる」ことではないでしょうか。東京にいながら福岡の情報収集となると、Webが中心になりますよね。でも、その土地に身をおくことで得られる情報というのがやはりあると感じます。
福岡のコワーキングスペースで人に話しかけてみるのも有効ですよ。案外、そういうところから飲みの場に繋がり、現地の人とすぐに打ち解けられたりしますから。今の福岡について尋ねると、きっとリアルな情報を教えてくれると思います。ワーケーションが可能でしたら、一週間ほど現地に滞在してみることをおすすめします。
地方移住転職で、自分だけのキャリアを輝かせる
高尾:求人票になった時点で、求人は面白くなくなるというのが僕の持論にあって。YOUTURNでは求人票はあえて作っていないんです。「こういう面白い方がいるので一度会ってみてください!」という具合に、こちらからポジションを作りにいくアプローチを取るようにしています。
Webや求人票で目にすることのできる案件は、すでに可視化・言語化され、広く流通しているものです。けれど、採用計画にも落ちていないような人材ニーズは、経営者の頭の中にしかない。特に新しいことを成そうとしている会社ほど、「どんな人を採用したらいいかわからない」と悩まれていることも多く、そこをいかに発掘してこれるかが私たちの仕事だと考えています。
長嶺:地方への転職は仕事内容や職種が狭まるとも聞きますが、移住する前と同じ職種・業種で転職される方が多いですか。
高尾:「キャリアが狭まるのでは......」と不安に思う方は少なくありません。私からお伝えしたいのは、その職業特有のスキルにはあまり注目しないほうがいいという点です。
東京は規模が大きいぶん機能が細分化されており、ある特定領域の専門家といったキャリアが育ちやすい環境です。地方においてそこまでの専門知識は、ある意味「過剰」とも言えるんです。それが地方に行くとキャリアが狭まる、限定されると捉えられる所以かもしれません。
一方で、ご自身の領域の強みを活かしながら、東京にいたとき以上に幅広く活躍される方がいらっしゃるのも事実です。例えば、転職前は電気系の設計に携わってきた技術者が、福岡で転職して、入社後新規事業に参加し電気系技術者の枠を超えて事業全体に関わっていくといったイメージです。
専門的な部分というより、プロジェクトマネジメントの経験や物事を前に進めるスキルといった“人間力”が問われる部分が、地方でのキャリア形成の要になるのではないかと見ています。PCになぞらえるなら、専門性を発揮するアプリケーションの部分でなく、仕事を前に進めるためのコアとなるOSの部分を重視するイメージですね。
そこに注目しご自身の守備範囲を広く取ることで、地方で築くキャリアの可能性も広がっていくように感じます。
九州・福岡への移住転職ストーリー
YOUTURNではこれまで、数多くの移住転職者の皆さんにお話を聞いてきました。どんな葛藤を経て、今に至るのか。どんな居場所を手にしているのか。リアルな声を、ぜひ参考にしてみてください。
いかがでしたでしょうか。今回は、2024年4月15日に開催された株式会社せんのみなとオンラインイベント「自分らしい生き方を叶えるUIJターン〜地方移住で輝く人たちのキャリアとは?〜」から、パネルディスカッションの模様をご紹介しました。
今後もYOUTURNブログでは、イベントレポートやYOUTURNの活動報告、移住転職者インタビューなどを通じ、最新情報を発信して参ります。
「内側にある価値観」に従い、「オリジナルの人生」を生きたいと願う方。そのためのステップとして移住転職という選択肢が頭に浮かんでいる方。まずは経験豊富なYOUTURNコンサルタントとのキャリア面談から始めてみませんか。