異業種キャリアが活きる3社目。福岡に渦巻くエネルギーを日々キャッチ|Zero-Ten Park取締役勝呂さんx鈴木さん
2023年2月、YOUTURNは累計100人の方々の、九州・福岡への移住転職支援を実現しました。
一人ひとりの自己実現につながるような移住転職のお手伝いをするなかで見えてきたのが、「移住転職キャリア」。YOUTURN代表の高尾が、Zero-Ten Park鈴木さん(2022年に異業界から転職後、現在はインキュベーション施設のコミュニティマネージャーとして活躍中)との対話を通して、移住転職キャリアについて考えます。
※鈴木さんの移住転職ストーリーはこちら
このまま銀行に居続ける恐怖。不安もありつつ最初のキャリアチェンジ
高尾:鈴木さんは新卒で福岡の大手銀行に入行後、ヘッドハンティング領域の人材紹介会社へ転職。現在は、福岡市が手掛けるインキュベーション施設のコミュニティマネージャーとして活躍中です。
最初の転職は12年間勤めた銀行から飛び出したわけですが、恐怖心などはありましたか。
鈴木:逆に銀行に居続ける方が恐怖を感じていましたね。35歳になるまでずっと銀行勤めだったので、裏を返せば銀行のことしか分からない。これまでの経験や知識が他社でも役に立つのだろうかという不安がありました。
もう一つの不安は、転職によって仕事の規模が小さくなり、物足りなさがあるんじゃないかと。今でも覚えているんですが、銀行の東京支社に着任した当初、電卓の桁が足りなくて焦ったんです。それくらい規模感が大きくて。日経新聞に書いてあることが目の前で起きていて、それなりに経済の第一線に関わる充実感もありました。それがなくなってしまうのでは、という感覚でしたね。
高尾:仕事の規模感が、自己肯定感にも繋がっていたんですね。転職先のヘッドハンティング会社は、金融のお仕事とは全く異なります。未経験の分野にチャレンジすることへの不安はいかがでしたか。
鈴木:不安はありましたね。特に、扱うものが「お金」から「人」に変わるという点。形のないものを相手に、自分の能力が活かせるのか、通用するのか見えませんでした。それでも、営業担当として培ってきた対人コミュニケーションスキルに、根拠のない自信を持って臨むしかなかったです、あの時は。
高尾:実際にヘッドハンティングを手掛けてみていかがでしたか。
鈴木:銀行経験を活かすこともできた反面、想像以上に難しかったです。転職の決断は、最終的には相手の気持ち次第です。自分のスキルや経験だけではどうにもできないと壁に突き当たることもありました。
でも振り返ると一社目も二社目もとてもいい経験となっていますし、今にも活きていると思えるんです。
詳しく聴きたい方はこちらからどうぞ(前編)↓
「経営者に貢献したい。」一貫した思い
高尾:鈴木さんがコミュニティマネージャーを務めるインキュベーション施設は、入居しているスタートアップがビジネス上のマッチングなどベネフィットを享受できる仕組みですよね。今のお仕事に、金融と人材業界でのご経験はどう活きていると感じますか。
鈴木:対象はスタートアップが多く、人と人とを繋げたり、投資家の方を呼んでメンタリングを受けられるようにしたりと、彼ら彼女らのお困り事をお手伝いしていくことが趣旨です。
仕事内容は変われど、前二社から一貫して「経営者のお手伝いをする」というスタンスは共通しているんです。
銀行に入ろうと考えたのも、当時は経済を生み出す業界で、経済を作っていきたい、経営者に貢献したいという思いがありました。
高尾:もし銀行の経験だけだったとしたら、今の会社で同じような動きができていたと思われますか。間に人材業界を挟んだことによって、何か差分を生んでいるのでしょうか。
鈴木:業界というよりも、二社目のカルチャーの影響が大きいです。成果主義で、制度にしても何にしても、数字と理論で物事を組み立てる習慣がありました。イベントも入居者とのメンタリングも、振り返って「何が悪かったのか」、「ならばこうしよう」というPDCAを回しますよね。数字を追って原因を探っていく、その考え方が役立っています。
頂いている報酬の分はしっかりコミットする、成果を出す、力を注ぐことに自分のマインドを向けられている点も大きいかなと思います。入居者の満足感は数字に現れるとは限りませんが、どれくらい責任を持って取り組んだかにも比例すると思うので。
高尾:銀行から飛び出して、二社目でストリートファイトのような環境に行ったことで、アウトプットを出すことへのコミットメントが培われたと。
鈴木:銀行から直接だったら、まだどこか生ぬるい自分がいたかもしれません。今でも世間知らずですけど、もっとそうだったでしょうね。
素の顔でコミュニケーションを取れる
高尾:これまでのご経験と、コミュニティマネージャーとしてのご活躍がまさに繋がった気がします。
コミュニケーションという言葉はビッグワードですが、鈴木さんの場合は、これまでの経験をしっかりと反映させたコミュニケーション力を発揮してるんじゃないかなと思うんです。
「お金」と「人」って、経営者にとってやはり大きなテーマです。銀行と人材業界で両方を見てきた上で、今コミュニティマネージャーをされている。鈴木さんだからこそ、バランスを担保しながらビジネスとして成立させられているように感じます。
鈴木:たしかに、過去二社でのバックグラウンドがあるからこそ、経営者の方がポロッと漏らした一言に、より解像度高くアプローチできているのかもしれません。
高尾:銀行であればお金、人材紹介なら人というソリューションを提供できます。でも今のコミュニティマネージャーの立ち位置は、直接お金や人材を提供できない。であれば、果たして今、鈴木さんが提供しているソリューションとは何だと言えそうですか。
鈴木:何でもないものを提供していると言えるかもしれません。独り言のような悩みや感情の共有であったり。ある意味パートナーのような、何でも気軽に話せるといった存在価値でしょうか。
高尾:興味深いですね。経営者の日常に伴走している感じだなと。僕らYOUTURNは人材紹介会社なので、経営者との打ち合わせは人にフォーカスした話がメインなんです。打ち合わせの相手が銀行だったらメインのお話はお金ですよね。
もし鈴木さんが特別なテーマを持たずに会話をできているのであれば、経営者にとってはとても頼りになるし、安心感があるんじゃないでしょうか。
鈴木:そういう意味では、経営者の方が、素のお顔でコミュニケーションを取れるというのはあるかもしれないですね。
プライベートな話やバカな話もする。でもポロッと事業の話もする。悩みだけじゃなくて、「もっとこうしたい」「こういうところを目指してるんだ」と、夢や希望についても熱く語ってもらえる。これ以上ないくらい面白い仕事だと思います。
フィルターもかかっていない、言葉も選んでいない、素のものがダイレクトに受け取れる。おかげで私も経営者の方を理解することができますし、どこかとお繋ぎするにしても、近い目線や情熱を持ってしっかりと紹介できているように感じます。
高尾:鈴木さんが提供しているソリューションは、まさにマッチングですよね。ひょっとすると、経営者すら想像していなかったような出会いや機会を作っているんじゃないかなと思いました。
転職というカードは一枚だけじゃない
高尾:キャリアを考える時に「自分の強みってなんだろう?」と悩む方が多いのですが、「努力しなくてもついついやっていること、苦じゃなくできること」。これがその人の本質的な強みだとよく言われています。
鈴木さん、今のお仕事を苦じゃなくついつい天然でやられていませんか。
鈴木:天然でやってるんですかね(笑)。でも、自分がワクワクするものを選びたいというのは常にあります。
出会った当初、高尾さんが「ワクワクするのはどちらか、最後はそれで物事を選ぶ」と話されていて。ストンと腹落ちしたんです。どうしても安心できたり理解できる方に比重を置きがちですけど、最後に大事なのはやっぱり、自分が楽しくてワクワクすることだと思いましたね。
高尾:鈴木さんはすごいなと思ったのが、チャレンジしてみて「違った!」となっても、過去に戻らなかったこと。戻っちゃう人もいると思うんですよ。「やっぱりワクワクに従って選ぶと痛い目に遭っちゃうな。これまで通り手堅い方で生きていこう」って。
でも、鈴木さんは二社目の後、ワクワクで選んだコミュニティマネージャーのお仕事で、今生き生きとされている。これは自分自身を信じた結果ですよね。
鈴木:一回目の転職では不安もあって、今思えばワクワクは少なかったかもしれません。でもこのまま銀行に居続けても、自分の望むものは得られない。だから、環境を変えるワクワクはあったんです。二社目に行ってみたら合わない部分もあったけれど、じゃあまた次に、もっとワクワクするところに行けば済む話。修正していけばいいんです。転職っていうカードは何も一枚だけ、一回しか切れないわけじゃないですから。
今回のラジオ対談のテーマが「移住転職キャリアを定義する」と聞いて、「キャリアってなんだろう?」と改めて調べてみたんです。厚労省は、「実感的持続性ないし継続性を持った概念」と定義していて。要は、生き方、プライベートも含めて、なにかしら継続的なプロセスのことを言うのだなと。
自分が心底やりたいこと、仕事や生活にどう向き合いたいのか。その反面、何を嫌うのか。自己分析をどんどんアウトプットして、自己理解を深めていくことこそ大事な気がしますね。
高尾:アウトプットとは、転職活動でエージェントと喋ってみることも意味していますか。
鈴木:そうですね。外に出して人から意見をもらうとか、実際話してみることで広がっていくものじゃないでしょうか。自分の内で温めているだけでは、自身の言葉や考えている範疇を超えないと思うんです。
何かに関心を持つことも、その人の変化だと捉えています。例えば、今まで転職や移住を考えたことがなかったのに、少しでも興味が湧くのも変化ですよね。「なんで興味を持ったんだろう?」って変化の根本にあるものを深掘りしていくと、不安は絶対にあると思います。けれど、不安と同じくらい、もしくはそれ以上のワクワクがあるかもしれないですよね。
詳しく聴きたい方はこちらからどうぞ(後編)↓
チャンスが巡る福岡。現地にいるから感じ取れるもの
高尾:まさに都市として変化を遂げる福岡で、これから描くキャリアも楽しみですね。
鈴木:「世界の中の福岡」を目指したいなと思っています。福岡はもっと世界で戦えるはずなんです。
高尾:いいですね!今、福岡が手にしていないもの。それを事業を通じて作っている。それを福岡という地域が手に入れることができたら、日本のみならず世界で存在感を発揮できると。
鈴木:福岡は、非常に魅力的な地方都市だと思うんです。今や日本に留まらず、世界を目指せる土壌が出来つつあると感じています。もう東京or福岡の時代ではなく、東京and福岡という自分のキャリアの作り方もできますよね。
福岡を拠点に、全国・グローバルの仕事を十分手掛けられる時代になってきているけれど、まだ人材が足りていない。裏を返せば、チャンスが巡ってくる回数も多いということです。福岡に来れば先駆者になれる可能性もある。楽しみしかないと思いますね。
高尾:スタートアップのインキュベーション施設となると自治体や企業、アカデミックの方面からも、色んな情報が入ってくると思います。それぞれの動きや情報が集まってくると「未来はこうなりそうだな」と感じる機会もなおさら多そうですね。
鈴木:各方面からの情報はもちろんですが、それ以上に入居者さんと接するなかで感じていますね。日頃からお手伝いしているスタートアップ企業自体が、今までにないプロダクトやサービスを生み出して「ここを目指してるんだ」と目の前で言ってくれている。その熱量に触れていると「福岡から発信していける。世界を舞台に戦えるな」と、未来が楽しみになります。
高尾:現地にいなければ入って来ないものですよね。情報だけでなく、エネルギーの動きや機運のようなもの。福岡の地にいるからこそ肌感覚でキャッチできて、ビジョンが見えてくるんですよね。
鈴木:やはり体験ですよね。移住して、福岡にいないと感じ取れないものというのは、実際に多々あると思います。
<編集後記>
今回は、2023年7月30日/8月6日配信のYOUTURN RADIOシーズン3「移住転職キャリアを定義する」の第2弾より、鈴木さんと弊社高尾の対談をお届けしました。
今後もYOUTURNブログでは様々なコンテンツを通じ、移住転職に向けた情報収集や思考整理に役立つ情報をお届けしてまいります。
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