【イベントレポート】地方に優秀なクリエイティブ人材を呼ぶためにできることはなんだろう?
地方移住が決して珍しくなくなってきた今の時代。ベンチャー企業の成長を後押しする存在として注目を集めているのが、クリエイティブ人材です。東京でキャリアを積んだ優秀な人材が、今地方でも必要とされています。
2019年3月6日、福岡市内のG’s Base Fukuokaで開催された「ベンチャー企業向け人材確保支援セミナー」では、クリエイティブ人材を惹きつけるためのtipsを考えるパネルディスカッションを行いました。
YOUTURNからは代表の中村がモデレーターとして登壇。本レポートでは、ディスカッションの様子をお届けてしていきます。
福岡移住のきっかけは「食」にあった……!?
中村 義之(以下、中村):今回は「優秀な人材を地方で確保するためにできること」という視点で人事や経営者の方に向けてお話をしていきたいと思います。
まずは、登壇者それぞれの自己紹介からいきますね。
僕は、2016年にYOUTURNを創業して、2017年から事業を開始しました。名前の通りUターン人材を支援する事業を行なっています。
もともとは東京で働いていたのですが、縁あって福岡の起業家と話したときに「人材が採れない」という悩みを聞いて。というのも、ベンチャー企業の多くはITを絡めた事業ですし、IT人材は今東京に一極集中しているんですよね。
採用媒体を駆使したり東京に足を運んで人材をスカウトしているそうなんですが、すごく各社の時間と手間がもったいないなと。福岡の企業と東京の人材をマッチングできたらと考え、YOUTURNの事業を始めました。
平木 正剛氏(以下、平木):僕は東京で10年ほどグラフィックデザイナーとして働いていたのですが、5年前に福岡に移住しました。
僕は広島出身で、妻が大分出身で、いつか西日本に移りたいと思っていたんです。なかなか踏ん切りがつかなかったのですが30歳も迎えてしまったので、思い切って移住した、という流れです。
現在は、デザイナーとしてクリエイティブに関わったり、人材のマネジメントなども行なっています。
中村:平木さんは、クリエイティブ人材として転職したけれど、現在は人事部長も兼任しているんですよね。少し珍しいキャリアだと思います。
平島 浩一郎氏(以下、平島):僕は、エンジニアとして2年前に福岡に移住しました。
それまでは東京でネットベンチャーで働いていたのですが、東京以外の地域にも住んでみたい思いから移住を検討していたんです。
3〜4年ほど移住先を検討して、あらゆる地域の中でもベストだと感じた福岡を選びました。現在はヤフーの福岡拠点でエンジニアとして働いています。
中村:東京のネットベンチャーで創業から上場まで働いた経験を持ちながらにして、移住転職する。大きな決断のように感じます。
堤 健太郎氏(以下、堤):僕は、愛媛生まれの佐賀育ちで大学から福岡に行きました。
学校にはまじめに通っていなかったのですが、在学中にドイツに留学をしたりSIerにデザイナーとしてインターン入社をしたりしました。
そのまま社会人になってからもSIerで働いていたんです。その後キャリアを考えて、イギリス人が福岡で設立したキュレイトに参画しました。
中村:キュレイトは多国籍人材に溢れた企業なんですよね。みなさんは、福岡に移住する、そして転職先を決めるときに、どんな基準で選んでいたのでしょうか?
平木:まず福岡だったのは、東京よりもごはん代が安いことと満員電車に揺られなくて済むことに魅力を感じたからですね。
育ちの地である広島も魅力的ですが、田舎すぎて仕事がないんですよ。バランスを考えたときに、福岡だなと。街が元気で、食事がおいしくて、人が良いですから。
また、転職先に関しては、事業と人で選びました。面白そうな事業だと感じましたし、メンバーの熱量がすごく高かったんですよね。
平島:僕の場合は、妻とすごく相談しました。
僕の両親は九州出身だったのですが、妻の両親は東北出身ってこともあって「どこに移住しよう?」から始まっていたんですよね。
九州や東北だけではなく、名古屋や大阪などまで広げて検討したのですが、最終的には食べ物が魅力でした(笑)。仕事に関しては、地方で日本を支えるという壮大さとキャリアにとってのプラスを考えた結果です。
堤:僕も、福岡移住のポイントは食かなあと(笑)。
転職先に関しては、完全に成長を求めていました。僕は昔から、劣等感を強く抱くタイプなんですよね。できないことが多いことが悔しい、というか。だから、英語を使う環境だったり裁量の大きい今の環境で成長したいと考えていました。
リモートワークのケースも多い。東京と福岡での働き方
中村:ここまでの話をまとめると、クリエイティブ人材は福岡のごはんに惹かれることがわかりました(笑)。
仕事の面に関していえば、事業への共感ややりがいにフォーカスされているようですね。実際に、みなさんが今はどんな働き方なのか、実例を交えて話を聞いてみたいです。組織、規模、文化など、前職と比べてどうでしょう?
平木:前職の社員数は4名、現在は約200名なので、規模的には大きくなりました。
一番違うのは、職場の雰囲気ですね。前職はすごくドライだったんですよ。社内でのコミュニケーションはなくて淡々と仕事をこなすし、ごはんをみんなで食べる、みたいな文化もありませんでした。
一方で、今の会社はコミュニケーションも活発ですし、ユーザーから生の声をもらえる機会も多くて。新卒とかの若手でもひとつのプロジェクトをまるっと渡されることがあるので裁量も大きくやりがいを感じています。あと、徹夜がなくなりました(笑)。
堤:うちは基本自由出社ですが、slackで日々の連絡を取り合って作業報告をしていますね。出社義務も設けていないです。ただ、なんだかんだ、日本人のメンバーは出社しているなと印象を受けますが(笑)。
難しいと感じるのは、時差があること。日本とロンドンと台湾に拠点があるので、こちらと向こうの時間が合わないんですよ。上手に利用できたら、24時間稼働する企業になれるのかなとは思っています。
ただ、会うことの大切さもあると思うので、できればオフィスには来てほしいなと考えていて。コーヒーやお菓子を置いておいて、出社することに魅力を感じてもらえるような仕組みづくりも意識しています。
クリエイティブ人材を福岡に招くためには?
堤:うちの場合は、海外からエンジニアを採用している少し特殊な環境だと思います。今年も海外のエンジニアを4人ほど採用しました。
日頃は、エンジェルリストを利用して世界中からの応募をいただいている状況です。エントリー数にして約100名くらいですかね。
過去の求人に対して未だに応募くださる方もいらっしゃるほどです。
採用の方法としては、まずは遠隔で業務委託のように仕事をお願いして、相性が良ければ日本に移住してもらう流れです。エージェントを利用することなく優秀な人材を集められているので、稀なケースなのかもしれません。
中村:グローバル人材の採用は珍しいですよね。平木さんはいかがですか?
平木:「楽しく働こうぜ」を決まり文句にしています(笑)。
東京で働くと、疲弊したりやりがいを感じられなくなったりするじゃないですか。だから、楽しく働ける環境であることを一番に押し出していますね。
事業やバリューもそうですし、地域貢献なんかの文脈もありますけれど、一番は「やりがいを求められる会社である」ということを伝えています。
「福岡だから」ではなく「この企業だから」
「ベンチャー企業向け人材確保支援セミナー」の一幕として開催された本ディスカッション。東京からの移住を経て福岡に渡った登壇者のエピソードは、参加者のみなさんの心の中にどのように残っているのでしょうか。
ディスカッションを聞いてみて感じたのは、今の時代、人は働く場所にとらわれずに企業の事業や人材に惹かれて転職を決めていること。食や住環境ももちろんですが、最終的には、企業の魅力そのものが決め手となっているようです。
地方で産声をあげたベンチャーがこれから人材を確保するために必要なのは、自社の魅力を遠くまで届ける仕組みや体制づくりなのかもしれません。
本イベントのファシリテーターを務めた中村率いるYOUTURNでは、福岡への移住転職者に向けた求人のご紹介やキャリア相談などを行なっています。ご興味のある方は、合わせてご覧ください。
(執筆:鈴木 しの 編集:榮田 佳織 撮影:中島 祐也)