移住転職で開眼した「プロデュース力」。福岡だからできる100倍チャレンジ|デジタルガレージ福岡・大木さんxYOUTURN高尾対談

移住転職コラム・ノウハウ
07/28/2023 更新

2023年2月、YOUTURNは累計100人の方々の、九州・福岡への移住転職支援を実現しました。

一人ひとりの自己実現につながるような移住転職のお手伝いをするなかで見えてきたのが、「移住転職キャリア」。代表の高尾が、2019年に東京の大手不動産デベロッパーからスタートアップと大手企業をつなぐIT企業に移住転職した大木さんとの対話を通して、移住転職キャリアについて考えます。

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会社を超えた「福岡を良くしていきたい」という共通の思い

高尾:大木さんが移住転職してからの4年間を振り返ると、会社の業種、働く場所、職種といろんなものが変化していますよね。しかも初めての転職です。福岡のあちこちで大木さんの活躍の話を聞くと、「大木さんが福岡にいる」からこそ生まれたものもあるのだろうなと。東京と福岡で、仕事を進める上での違いは感じますか。

大木:まだ活躍できたとまでは言えないとは思いますが(笑)最も大きな違いは、仕事を一人で進めていることです。本社は東京にありますが、福岡で活動するのは私一人。チームとはオンラインでやりとりしています。

もうひとつは、一緒に仕事をする人の考え方ですね。東京では比較的、経済合理性に基づいて事業が展開されます。もちろん福岡でもそうですが、東京よりも「同じ福岡で働く仲間」という意識を感じます。目の前にある、自社の利益だけに食いついてばかりだと「『そういう人や企業』なんですね」とみなされます。

高尾:会社を超えた概念というか、モチベーションが存在すると。

大木:「福岡を良くしていきたい」という共通の思いがありますね。意思決定の場において、「それは福岡を良くすることにつながるのか?」が問われていると感じています。そこが東京とは違います。

福岡出身の私も同じ思いです。私の場合は本社が東京の会社で働いているので、福岡の「中の人」でもあり「外の人」でもある。私がビジネスのハブとなり、東京と福岡をつなぐのだと自覚しており、そのバランス感覚があったから4年間のキャリアが続いたと思います。

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執着を捨ててアンラーニングを繰り返した

高尾:移住転職をしてから、どうやってその意識にたどり着いたんですか。

大木:正直、あまり覚えていないです。会社も業種も働く場所も、いろんな変化がありました。前職の、昔取った杵柄で事業を立ち上げることに固執しない方がいいのではという葛藤と、とは言え10年のキャリアで培ったものをゼロリセットするのも違うのではと。

いわゆるアンラーニング(これまで得た知識を取捨選択し、新しいものとして取り入れること)を繰り返してきた感じですね。ある議論を、自分の得意領域にわざと引っ張っていないかとか、前職の進め方に固執していないかとか。移住した直後にコロナ禍になり、コミュニケーションがオンラインになったことも大きいです。目の前のことだけにとらわれすぎることなく、自分の得意領域を起点にしすぎないように、とは意識しています。

高尾:変化が多すぎて、執着するよりどころがなかったとも言えますね。

大木:そうですね。極端な話、自分の得意領域を生かすだけならフリーランスでいいわけです。所属会社の経営資源を使いながら、九州・福岡のいろんな事業の機会を育てる役割を果たさないと、私が福岡にいて会社に所属する意味はないと考えていました。そんな試行錯誤を繰り返す中で事業の組み合わせをコーディネートして合意形成し、プロジェクトを推進することが、私は得意だと気がついたんです。

高尾:まさに、不動産デベロッパーでプロジェクト管理をしていたときの「メタで捉えて構造化する」能力が発揮されたわけですね。

大木:建築で培われた、複眼的な視点と思考が強みになりました。前職でも、プロジェクトの途中で「できた」とわかるタイミングがあったんですね。現職の無形のビジネスに関しても、同じように「できた」がわかるようになりました。無形である分、数字やロジックで説明する必要がありますが。今はその点で少し大変です。

ロードマップを描き、やり遂げるというプロデュース力

高尾:大木さんは、福岡で何か専門性を身につけたわけではないのかも知れないけれど、キャリアは確実に進化していますよね。何が影響していると思いますか。

大木:「構想力」と「やり遂げる力」でしょうか。

私の専門性は言語化しにくくて。わかる人には「大木がいないと、この案件はこの規模で成立しない」とわかってもらえるのですが、わからない人にはわからない。仕事が前に進んでいるからある程度評価はされていると思いますが、単なるブローカーだと見る人もいます。悩ましいですね。

高尾:私がキャリア相談を受けるとき、「専門性を身につけたい」と話す人は多いですね。キャリアアップのためには専門性が必要だという考えが、まだまだ根強いのだと感じます

これまでキャリアを論じるときに、「スペシャリスト」「ジェネラリスト」という分けかたがありました。ニュアンスとしては、スペシャリストに対してジェネラリストは肩身が狭いというか、「ジェネラリスト=スペシャリストになれなかった人」というか。

そうではなくて、「仕事を作れるプロデューサー」であることが、ジェネラリストのなかでの得意分野になるのではと感じます。私は物事を構想してロードマップを描き、やり遂げるというプロデュース力が今後は専門性になるのではという仮説のもとで、キャリアコンサルティングをしています。

大木:ぬり絵を渡されて指示された色を塗っていくよりは、紙と鉛筆だけ渡されて「絵を描いていいよ」と言われる方が、力を発揮するタイプですね。

福岡なら、プロデューサー人材が打席に立てる

高尾:自由度が高い仕事で高いパフォーマンスを発揮する人ですね。そういうプロデューサー人材にとって、九州・福岡はどういう場所だと思いますか。

大木:福岡で事業を始めるときには、本来福岡に限った話ではないと思いますが、相手先との人間関係の方が先に構築されますね。その上で、「うちはこういうことができるけど、一緒に何かやりませんか」と。

高尾:やりたいことよりも、人間関係や信頼関係が先にあるんですね。

大木:福岡の企業の「何かやりませんか」の根底の目的意識には「福岡地域を持続可能な形でもっと良くしていくこと」があると感じます。冒頭にも話した通り、目先の利害よりも福岡を良くしたいという志がある方が、収益性だけに終始しない、持続可能な事業のパートナー探しも進みやすいですね。

高尾:それはプロデューサー人材にとって、仕事がしやすい環境なんでしょうか。

大木:人によりますね。仕事を通じて福岡を良くしたいと思う人にとっては、福岡はいいところだと思います。楽しいですよ。私自身、現在進行中のプロジェクトでは相手方の地元愛の強さを感じています。

高尾:大木さんのようなプロデューサー人材は、福岡にはまだ少ないのでしょうか。メタ視点を持ち、事業の構想から実装までをやり遂げられる人という

大木:東京でも、あまりいない気がしますね。むしろ東京は、プロデューサー人材がいたとしても、組織が大きいために登用されないというか、打席に立てていない人も多いのではないでしょうか。その点では、福岡の方がプロデューサー人材は活躍できる気がします。

高尾:面白い視点ですね。組織が大きいと、プロデュース力やマネジメント力があっても発揮する機会が得られにくいと。

大木:そうですね。能力があるのに、もったいない話ですよね。私は前職で、一担当だったころからプロジェクトに関しては若年時からマネジメントをしていましたこともあり「自分はマネジメント向きでは」と思っていました。今回の移住転職のチャンスがなければ、今ごろ東京でくすぶっていたかもしれません。

福岡では人間関係が重んじられるからこそ、実績を重ねることで信頼関係がさらに強まり、案件の規模も大きくなります。私も今は、自分にしかできないことに集中して、もっと福岡のためになることを進めたいですね。

高尾:視座が高まったんですね。この4年間で、「この仕事にはこの人」というノウハウが大木さん自身に蓄積されたのも大きいのではないでしょうか。

詳しく聴きたい方はこちらからどうぞ(後編)↓

福岡では東京の100倍チャレンジができる

高尾:ひとつの視点として、東京で大規模なプロジェクトの末端にいるよりも、多少規模は小ぶりでも、福岡でプロジェクトを主導する方がキャリア的には良さそうですね。

大木:絶対に良いですね。末端だと自分の目の前の部分最適にとらわれてしまい、全体像がわからないまま仕事を進めなければなりません。規模は小さくても高い視点から物事を捉えることで、社会人としての器は確実に大きくなります。今私が取り組んでいるプロジェクトの規模は決して小さくありませんが。

高尾:チャレンジする「数」としては、前職と現職で違いはありますか。

大木:感覚的には100倍違いますね。自分でロードマップが描ける、描かなければならない時点で、比較にならないです。

福岡というロケーションも影響しています。現職は東京に本社がありますが、同じ仕事を東京でやっていたら、チャレンジは減ると思います。目の前に誰かがいると、自責ではなく他責にしたくなるというか。「あなたが決断しないから、私はチャレンジできませんでした」と言いたくなってしまうと思います。今は福岡で私一人で進めているので、何かあれば自分が矢面に立つし、かかるプレッシャーもまるで違うのでやりがいがありますね。

高尾:自分で仕事が作れるプロデューサー人材にとって、福岡への移住転職キャリアは、プラスに働くと思いますか。

大木:そう思います。それに、もしチャレンジして成果が思うようにあげられなかったとしても、福岡での生活コストは安いので何とかなります。さらに言うと、福岡でチャレンジして、ダメだったなと思ったら、東京に戻る選択肢だってあるんです。失敗もキャリアアップにつなげるぐらいの気持ちで、一度福岡に来てみるといいのではないでしょうか。

選択肢の幅、進め方。移住転職でキャリアアップできた

高尾:大木さん自身は、東京から福岡への移住転職という選択を通して、キャリアアップしたと言えますか。

大木:言えますね。4年前と今では、キャリアの選択肢の幅が全然違いますし、アウトプットの有形/無形や業界を問わず、仕事が進められるようになった自覚があります。自分がキャリアを通じて実現したい姿を目指して、本心に向き合いながらキャリアを選び取れるのは、キャリアアップと言えると思います。

高尾:現在手がける仕事に対する、思い切りのよさにも影響していそうですね。仕事やキャリアに対する大木さんのお話は、1年後も2年後も、いつ聞いても内容や切り口が変わっていそうで楽しみです。

今日のお話は、今後「移住転職キャリア」を定義していく上で、多くのヒントをいただきました。ありがとうございました。

<編集後記>

今回は、2023年7月2日/9日配信のYOUTURN RADIOシーズン3「移住転職キャリアを定義する」より、大木さんと弊社高尾の対談をお届けしました。

今後もYOUTURNブログでは様々なコンテンツを通じ、移住転職に向けた情報収集や思考整理に役立つ情報をお届けしてまいります。

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著者 YOUTURN編集部
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