ルーツは小学生の時のプログラミング

ー 山本さんの人となりやサービスへの想い、otta社の今後の展望などを伺いしたいと思います。まずは略歴と起業までの経緯をお話し頂けますか?

僕は山口県で生まれて、幼いころから電気や情報処理が大好きでした。高校は地元の山口市から電車で1時間かかる徳山市の工業高校に入学したんですが、そこの電気情報学科にどうしても通いたかったんです。入学してからは一度も休んだことないですよ。皆勤賞です(笑)。

― その分野で学びたいものが幼い頃からあったんですね。

そうですね。電気機器などの新しいものが好きだったんでしょうね。思い返してみると、小学生の時にカートリッジを差し込んでゲームができるパソコンを買ってもらったんですが、カートリッジ自体は買ってもらえなかったんです。その代わり、技術本を参考にしながら、N88-BASICを書いて遊んでいました。それがプログラミングが好きになったルーツなんだろうなと思います。

― 小学生の頃から遊びでプログラミングを書いていたんですね(笑)

そうですね。また、家の近くに粗大ゴミ置き場があって、そこに捨てられている機械を持って帰って分解して遊んでもいました。そういう電気機械とか情報処理とかが小さい頃から好きだったんです。

― プログラミング(ソフトウェア)も機械(ハードウェア)も好きだったんですね。まさに今のIoT事業は得意分野なわけですね。

そうかもしれませんね。そういった経験もあって、電気と情報処理を高校で学び、卒業後は半導体の工場に就職しました。その半導体工場では、7年間ぐらいロボットのメンテナンス業務をしていました。

7年間ハードウェアの仕事をしたので、次はソフトウェアに関わる仕事をしたいなと思ったんです。そこで、広島の地場のソフトウェア会社に転職して、そこでまた7年ほど働きました。

― そのソフトウェア会社ではどういった業務をされたんですか?

最初4年ほどプログラマーとして働いた後、営業への異動を希望して、システムの提案営業と企画営業の業務を2〜3年ほどしていました。

新規事業の打ち切りと起業の決意

― 今のotta社のアライアンス開拓にも通じる業務ですね。

そうですね。その中でも最後の1年が起業に繋がる経験になりました。ちょうど初代iPadが発売されて間もない頃、iPadをタクシーに設置して遊べるコンテンツを作り、そこに配信する広告の再生回数で課金するサービスを考えました。そのサービスを社内で提案した結果、採択されて、事業の立ち上げを行うことになりました。

実際にサービスを開始してからは、一番多い時で約200台のタクシーに設置されるまでに成長しました。しかし、順調にサービスが成長しているにも関わらず、立ち上げから1年でサービスを終了することになったんです。当時の社長が交代して、新しい社長に変わったことが理由です。

― それは急な展開でしたね。会社として方針転換があったんですか?

そうです。よくありがちな社長交代後の方針転換ですね。もともと3年計画で事業計画を作っていたので、その決定には猛反発したんですが、決定は覆りませんでした。このサービスに取り組んでいた時は分からないことだらけでしたけど、新しいことを始めるのが本当に楽しかったんですよね。

この経験を通じて、「会社に属して新しいことをやっても会社の方針に左右されてしまうから、次は自分で起業しよう」と思うようになりました。でも、その時点で起業の具体的なアイデアはまだなかったです。

― 悔しい経験でしたが、その経験が起業を考えるきっかけにもなったんですね。

1つのきっかけではありますね。ただ、一番の起業のきっかけは、その後子供が生まれたことでした。

当時、AppleがiBeaconという規格をリリースすると話題になっていたので、それを活用してポイントやクーポンを配信するシステムを飲食店に提案していたんです。その時に、この規格を利用した位置情報の記録によって「子供の見守り」ができるのではと思いつきました。

― お子さんがいらっしゃることが事業アイディアのひらめきにつながったんですね。その後、サービス開発はどのように進められたんですか?

先述のとおり、「新しいことをやるなら自分でやろう」と思っていたので、会社には提案せず、家で色々調べたり知人に相談したりして試作品を作ったりを1年くらい続けていました。そして、いざサービスとして立ち上げようと思うと、結構なお金が必要であることが分かったんです。そこで、スポンサー探しをしたら知人の知人の方が運良くスポンサーになって頂けたので、本格的な開発に着手しました。

― 当時の開発はどのような体制で行われたんですか?

僕一人とオフショア開発ですね。僕と東京のエンジニアとフィリピンのメンバーが4人くらいでスタートしました。プロトタイプが半年くらいで出来上がって、そこから動かしながら開発を続けていって、開発を始めて1年後の2015年の秋になんとか原型が出来上がりました。

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導入のきっかけは高島市長との出会い

― アイディアがプロダクトとして形になったわけですね。見守りサービスの最初の導入はどの小学校だったんですか?

福岡市の警固小学校ですね。開発をしている時から、ずっと完全無償で一緒に研究していただける導入校を探していたんです。しかし、トライアルをして頂ける学校が広島では見つかりませんでした。

導入校探しで困っている時期に、広島の会社の代表として東京のスタートアップイベントに出席することになりました。たまたまそのイベントに高島市長(現福岡市長)が参加されていたので、声をお掛けして「(福岡市の小学校が)導入校になっていただけませんか?」とお願いしてみたんです。すると、「いいよ」とその場で仰っていただけたんです。

その後、すぐに福岡市職員の方と打ち合わせをすることができました。何度か打ち合わせを重ねた結果、警固小学校への導入が決まりました。このきっかけがなければ、実証実験が今現在どこまで進んでいるか正直分からないですね。

― グッドストーリーですね。行政としても結果的にotta社を福岡に誘致できましたし、otta社も導入校を決めることができたわけですね。

そうですね。ただ、最初の導入は大変でした。自分としてはサービスは完成しているつもりなんですけども、実質はベータ版なんですよね。バグもあるし、正常に動作しない場合もありました。どう対応したらいいかというのを考えて続けて、改善していく日々でしたね。

― なるほど。今でこそいくつもの自治体に導入が進んでいますが、最初はそういった苦労があったんですね。

福岡に移住して家族との時間が増えた

― その当時、広島にあった本社を、その後(2016年10月)福岡に移されたのはどういった理由からですか?

東京に行く頻度も増えていたので、広島にいるよりは福岡に移った方が交通の便が良くなるだろうなというのが一つの理由です。広島は空港が山の中なので、移動に時間がかかるんです。

二つ目の理由が、警固小学校への導入を皮切りにサービスを福岡市に普及させていきたいという思いです。

最後の理由は、福岡市は行政がスタートアップ支援に積極的なので、行政からの支援を得やすく、人材も採用しやすいのではと思ったからです。人材採用にはまだ課題がありますが、行政の支援という点では福岡市はやはり良かったですね。市の職員の方からできる限りの支援や色々な橋渡しをして頂いています。

― 山本さんご自身も広島から福岡に移住されましたね。実際に福岡に移住されて、生活面の変化はいかがでしたか?

生活は楽になりましたね。広島にいる時は福岡・大阪・千葉・東京などへの移動が多かったですが、福岡に来たことで家族といる時間が増えました。子供の見守りサービスを子供のためにやっているのに、子供と遊べないというのはフラストレーションが溜まりますしね。子供もすごく喜んでいて、転校初日から友達が家に遊びに来るくらい友達がいっぱいできてます。

― お子さんが喜んでくれたのは何より嬉しいですね。

みんなで作る誰もが使える見守りサービス

― ここからはotta社のサービス概要や今後の展望などお伺いしていきたいと思います。

自分たちの街を「住みよくしていく」、「安心な街にしていく」ためのインフラ作りが僕らのサービスだと思っています。具体的には子供や高齢者に見守り端末を持ってもらって、地域の住民や保護者の方の協力を得て見守りのネットワークを張り巡らせていくというのが基盤になります。

それによって何を目指していくかというと、「誰もが手軽につかえる保険のような見守りサービス」、「持っていて当然のような見守りサービス」にしていくことが目的です。

従来のように企業が大規模なインフラ投資をするとサービス料金に転嫁するしかないので、ユーザーの利用料金が上がります。一方で、それを行政が肩代わりするとなると財政が豊かな自治体しか維持できないようなサービスになります。

ottaはどこかの誰かの偏った投資や負担を強いるサービスではなくて、みんなで作ってみんなで負担することで、持続可能性が高く、どんな自治体やどんな規模の街でも使えるサービスです。みんながottaを使っている世界を作れば、犯罪の抑止力にもなると思いますし、そういった効果を狙っていきたいと思っています。

― お話を伺っていると単純なIoT、アプリのサービスというよりは、コミュニティや共同体を作るサービスということですね。

「新しい絆作り」というイメージに近いと思いますね。昔は近所の住人同士の挨拶や声がけは当たり前だったんでしょうけど、僕らの世代や都市環境では出来にくいという心理が働きます。それを無理やり実行するのではなく、「そっと見守る」というか、「ローストレスで見守る」というのが今の時代に合ったアプローチだと思います。誰もが無理なく、地域で街の安全に貢献していく形ですね。

データを活かした安全な街づくり

― 昔の村社会で機能していた「見守り」というか「相互扶助」を、現代的なテクノロジーで置き換えたイメージですね。事業の今後の展望はどのように構想されていますか?

まずはこの見守りシステムを全国に広げていくことが最初のステップですね。次のステップとしては、多くの人にご利用いただくことで子供や高齢者の行動データが溜まっていくので、そのデータを利用して安心安全な街を作るための情報提供や仕組みづくりをしてきたいと思っています。例えば、「この公園は暗くて危ないから街灯を設置したほうがいいんじゃないか」、「この道は不審者で出るから危ないよ」などの情報が街づくりに反映されたら、より安心安全な街になっていきますよね。

― 確かに、街なかの子供の行動経路を重点的に改善していけば、効率的に安全な街づくりができますね。ぜひ実現して欲しい取り組みです。

「自分ごと」としてサービスに向き合ってほしい

― 最後に、この記事を読むU・Iターン希望者に対してのメッセージをお願いします。

福岡は住みやすくて居心地は良いのですが、一方でIターンの場合はどうしても友達が少ないんです。そういった方でも住みやすくなるように、U・Iターンの人同士も交流できるような仕組みづくりを一緒にしていければなと思います。

それと、「福岡でこういうカッコいい仕事ができてるんだぜ」というのをアピールして欲しいですね。「福岡に行くんだぜ」とか、「福岡のこんな会社で新しいことやるんだ」とかをオープンに発信してほしいと思います。

― 福岡にottaのサービスが普及することで、「子供を育てるなら福岡が一番安全だよね」ってなるとより素敵ですね。otta社を志望する求職者に伝えたいメッセージはありますか?

「楽しいことをやりたい」と思っている人に来てもらいたいですね。僕自身がそうなんですけど、僕らのサービスって自分の生活をもっと良くするために作っているので、「仕事は仕事」って割り切れないんですよね。

サービスを「自分ごと」として捉えて、「自分が広めて行くんだ」と思える人と一緒に働きたいと思っています。幸いにも今の会社のメンバーはそういう人ばかりです。

― 社会のインフラとして安心・安全に関わる責任のあるサービスを楽しんで取り組むことができたら最高ですね。本日はありがとうございました!

会社情報

所在地福岡県福岡市中央区天神3-10-1 天神源氏ビル301
設立年月2014年10月
社員数4名
関連業界アプリ/IoT
urlhttps://otta.co.jp/
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