大気中のCO2で世界をトランスフォーム
九大発のDACスタートアップ
Carbon Xtractは、DAC技術(Direct Air Capture)を2020年代後半に実用化させることを目標に、総合商社である双日株式会社と国立大学法人九州大学が中心となって2023年5月に誕生しました。
DACは、大気中からCO2を選択的に回収する技術の総称であり、様々な回収方法が存在しますが、私たちは、ナノレベルに薄いガス分離膜を用いた回収方法(膜DAC技術/membrane based Direct Air Capture)を開発しています。
この技術を用いれば、小型・分散型のDAC装置を世の中に出す事が出来ます。つまり、企業だけでなく個人レベルでもCO2を回収する事が出来る世の中になり得ます。
一方で、CO2は、地球温暖化の原因とされており、悪の根源のように見られがちですが、実は、エネルギーや生活用品の基礎原料にもなります。炭素は、これまでも私たちの生活を支えてきた貴重な資源です。
よって、このCO2を大気中から回収して有効活用していく事が出来れば、地球にやさしい持続可能な社会を実現することができます。
私たちは、膜DAC技術を使って、大気中のCO2に新たな価値を持たせ、世の中の誰でも・何処でも・何時でもCO2を活用できるという世界を目指しています。
社名はCarbon(CO2)をExtract(抽出する)のスペルからEを取り、「Carbon Xtract」としました。「X」には世界をトランスフォームしたいという思いが込められています。
社会実装を遠い未来の夢で終わらせず、覚悟を持ち、本気で取り組む気概を持ちながら社員一体となって取り組んでおります。
CO2を大気から回収するためには、高度な技術が必要です。
このCO2を大気中から分離するガス分離膜は、九州大学の藤川茂紀主幹教授(九州大学カーボンニュートラル・エネルギー国際研究所)の研究チームが長らく研究を重ねてきました。
私たちは、この藤川教授の成果を商業化していく事になります。藤川教授は、私たちの会社の取締役兼最高技術責任者として、一緒になって事業化に向けて奮闘してくれています。
ただ、世界の熾烈な戦いに勝ちながら早期に商業化していく事は、設立間もない私たちだけでは不可能です。
よって、一緒に開発を進めてくれるパートナー企業にはじまり、将来的な量産を見据えた材料メーカー、膜の製造メーカー、装置の製造メーカー、ユーザーなどの様々な外部企業との関係づくりが重要です。
私たちは、自社開発を進めつつ、これらの外部企業と連携しながら、どういった製品をどうやって世の中に送り出していくのか、一緒になって考える日々を送っています。
CO2は様々な活用が可能です。皆が飲んでいる炭酸飲料をはじめ、農業、化粧品、ドライアイスなど、幅広い産業用途があります。
大気中から回収したCO2を価値あるものに有効活用することで見えてくる循環型社会を、私たちは具現化させていきます。
脱炭素化を目指す新しいテクノロジーの中でも、DACは近年になって広く注目される分野となってきております。
その中でも膜DACについては、2020年、藤川茂紀教授がリードする研究が国家プロジェクトである「ムーンショット型研究開発制度」の事業として採択され、注目を集めました。
当時、藤川教授には、この技術を社会に実装し、実用化させたいという強い思いがあった為、様々な企業にコンタクトしていました。
その中で、CO2の回収技術は単一の用途ではなく、あらゆる分野への活用の可能性があるという理由から、様々な業界での事業展開を進めている総合商社に焦点を絞り、最終的には双日をパートナーとして選定されました。
2022年2月、双日と九州大学は、膜DACの実用化と事業化を目指す覚書を締結し、早期の社会実装に向けた検討を進めることをリリースしました。
その後、社会実装を加速するために、双日と九州大学が中心となって議論を進め、大学発スタートアップという形で会社を立ち上げることとなりました。
CO2を分離回収する方式には大きく3種類あります。最も実用化に近いものは、その中の溶液吸収と固体吸着の2つです。
既にグローバルで有名になっているスタートアップを中心として複数の会社がこれらの方法を採用しています。
一方、私たちが用いている方式は「膜分離」という方法です。膜によって空気からCO2を濾しとることで、回収する仕組みです。
つまり、「膜」と空気を膜に集中的に接触させる為の「ポンプ」があれば、CO2の回収が可能です。
よって、シンプルであるがゆえ、コンパクトサイズの装置にする事が可能です。小型化することで、例えばオフィスや家庭でもCO2を回収できるなど、様々な可能性が広がります。
社会実装の第一弾として取り組んでいるのは、農業への活用です。
ビニールハウス内のCO2濃度を高めると植物の生育が進み、収穫量が数十%上がるとも言われています。
よって、膜DACを活用し、大気中のCO2を回収して植物に与えれば、農家の収穫量が上がりながら、脱炭素化にも貢献できるという事になる訳です。
農業従事者の高齢化が進むなど、日本の食料自給率は下がる一方です。DACは、この問題の解決策になり得る可能性を持っています。
最初は農業からはじまりますが、その先の将来は、CO2回収装置を都市の中に分散配置したいと考えています。
様々な所に装置を配置していけば、都市全体でみると、バーチャルな意味でいえば、メガトン級のCO2回収プラントが都心部に出来上がる事になります。
これは、太陽光発電と同じ考え方です。都心のビルの全ての屋上にソーラーパネルを置けば、都市全体でいえば、大きなメガソーラーになる、この考え方です。
繰り返しになりますが、膜DACは、構造がシンプルであるからこそ、様々な形で実装化ができます。よって、新たなテーマを次々と考えていく事ができます。これを沢山の企業や人と実現していきたいです。
どれだけ反響が大きくても、実際に購入して使う人の数には限りがあります。
DAC装置も、「こんな物があればいいな」と言ってくださる方がいるとしても、いかにして実際に手に取って買って貰えるか?といえば、そこには大きなギャップがあります。
脱炭素に貢献できるというだけではなく、利便性やカッコ良さなどのメリットを付加価値として提供していく必要があります。
需要が少しずつ見えてきた中で、これをいち早く事業化していくためにもニーズを満たす製品を世の中に出していかねばなりません。
その為には、試作装置を出来る限り早く製造し、トライアンドエラーを繰り返しながら完成品に近づけていくことが重要です。
そして、このアプロ―チを一緒にやってくれるエンジニアをはじめとしたチームメンバーの強化が不可欠です。
年々、気候変動が深刻化しています。このままでは、10〜20年もすると夏は外で遊べなくなるおそれがあります。
夏休み、子どもたちが公園やグラウンドで走り回ることができなくなる世界がもうすぐ近くに迫っています。
そんな状況をどうにかして食い止めたいと真剣に考えている方と共に、夢物語ではなく、自分たちの手でCO2の循環型社会を実現していきたいと考えています。
私たちは九州大学発スタートアップとして、DACという地球の未来を変える力のある技術を九州から世界に発信していきます。
九州各地の企業とのコラボレーションも、着々と進めていきたいと思っています。
特に応援して下さっているのは、福岡地場のエネルギー会社、金融機関、機械・装置設計パートナー、行政機関、その他多くのスタートアップ企業、さんたちです。
他にも幅広いパートナーを更に増やし、九州・福岡を盛り上げてまいります。
技術職だけではなく、いずれは営業・企画・マーケティング部門なども強化し、会社を大きく成長させていきたいと思います。
普段目にするニュースで報じられているようなクライメイト・クライシスに対して、 事業を通じて何かしら貢献したいと考えている方へ。
福岡には私たちCarbon Xtractのような面白い企業があるということをお伝えしたいです。
国内外で活躍していて、九州に愛着を持っている方や、ご自身の経験・スキルを九州に還元したい、福岡に還元したいと考えている方へ。
ぜひ私たちにコンタクトください。
福岡県福岡市西区九大新町5-5-112 いとLab+研究開発棟1階 La Colline
6,400万円
非公開
森山 哲雄
2023年5月
4名
小型・分散型DAC/化学
YOUTURNからのコメント
産学連携で九州から世界へイノベーションを起こす
高尾大輔
YOUTURN 代表取締役 キャリアコンサルタント
CarbonXtractは九州大学で藤川 茂紀教授が長年研究してきたCO2削減の技術と、双日株式会社のビジネス開発力を融合し立ち上がった「九州発ベンチャー」。
双日でも初となる大学とのジョイントベンチャー設立で、九大の研究技術を地球環境の改善に活かし事業化していく、非常にチャレンジングな取り組みです。
代表の森山さんとお話ししながら、「この技術で日本(九州)が世界をリードしていく」、「産学連携でイノベーションを起こす」。そんな未来が本当にすぐそこまで来ていると感じ、とてもワクワクしました。
地元九州の大学で研究されてきた世界に誇れる技術が社会に実装される。それが地球規模のプロジェクトという事実。福岡へ移住転職を検討されている方々の背中を押す壮大なビジョンではないでしょうか。
まだ立ち上がったばかりのスタートアップで、モノづくりのエンジニアからビジネス開発まで今後いろんなポジションで人材が必要となってくるでしょう。
「福岡に移住をするのであれば、『社会貢献を直接感じられる事業に携わりたい』」。「九州から世界に誇れる『事業の立ち上げ』に参画したい」。
このような価値観をお持ちの方には、貴重なキャリアの選択肢になるのではないでしょうか。