「今は家族を優先したい」と熊本から福岡へ移住。ワクチン開発の経験を活かす
昔の自分と今の自分を比べて、「人生の優先事項が変わった」と感じる人は多いと思います。コロナ禍で、その変化がより顕著になったのではないでしょうか。
熊本の製薬会社に勤めていた江崎さんは、家族のために福岡へUターンしました。10年間、1つの会社で働いた末の決断に、周囲からは「もったいない」と言われたそうです。
江崎さんは家族を優先させつつ、「やりたい仕事」も妥協せずいた結果、これまでのキャリアを活かせるKAICO株式会社に転職。現在、医薬品の品質保証を担当している江崎さんに、移住転職の経緯を聞きました。
熊本で10年ワクチン開発に従事した後、家族のために福岡へ
ーー福岡出身の江崎さんは、九州大学のバイオ系研究室で細胞の培養や分裂などに関する研究をおこなっていました。専門的な知識がありながらも、働く業種にこだわりはなかったそうです。
就活では、業態はあまり絞らず、新しい製品を世に出す仕事を探していました。九州で働きたかったので、近隣で製品開発できる会社にいくつか応募したんです。その中で、熊本のワクチンメーカーと最初にご縁があり、すぐに入社を決めました。
新製品の開発部署に配属され、ワクチンの作り方の研究や、作り方が決まったものをどのように商業ベースに乗せていくかという製法の設計などをしていました。10年間、携わっていたのはずっと同じ製品です。
開発したワクチンを生産するために工場を建てて機械を入れ、厚生労働省のレギュレーションにどう合わせるかを考えたり、ワクチンを打つ試験をするために安全性を保証する実験をしたり、幅広い仕事に関わっていました。
ーー熊本から福岡にUターンすることになったきっかけはなんですか。
一番の理由は、家庭の事情です。福岡の親が病気がちで、長い間、熊本と福岡を行き来して通院の手助けなどをしていました。2019年、父の入院生活が続いていた時に、福岡に仕事がないかなと少しずつ調べ始めたんです。
ーーご家族のことがあったとはいえ、福岡へ転職することに迷いはなかったですか。
10年間、1つの仕事を続けて思い入れもありましたし、扱っている製品がまだ市場に出てないこともあって、最後までやりきりたい気持ちはあったんですけど。
人生の中でのフェーズというか、その時々で何を大事にするかは、人によって違うと思います。私の場合、ちょうど仕事盛りの年齢ではありながら、家の事情もありました。自分の仕事を大事にしたい気持ちと、家族のために何かしたいという気持ちの間で、真剣に考えましたね。
まわりに相談する中で、「今までがんばってきたのに、もったいないよ」とはよく言われましたね。一方、「自分でそう判断するんだったら、いいんじゃないか」と言ってくれる人もいて、最後は自分にとって何が大事かよく考えて決めました。
KAICOには大企業にはないエネルギーがあった
ーー複数の転職エージェントに登録していた江崎さんですが、なかなかやりたい仕事が見つかりませんでした。福岡には医薬品を扱う会社がほとんどなく、江崎さんのようなキャリアの人が帰ってきにくい状況でした。
「仕事の紹介を待つだけではダメだ」と感じ、自分でも探そうと調べている中で、福岡に特化したYOUTURNの存在を知りました。YOUTURNのサイトでKAICOを見つけ、ここなら自分のキャリアが活かせそうだと思ったんです。実家と会社が近いことも、魅力の1つでした。
ーーKAICO代表の大和さんとお話した時の印象はどうでしたか。
ベンチャーの社長らしく、「何でもチャレンジしていこう」というエネルギーを感じました。製薬企業での仕事は理詰めというか、あらゆることを根拠ありきで説明しないといけないことばかりだったんです。
KAICOでは、代表の大和さんをはじめ、みんな「とりあえずやってみて何かあったらその時考えればいいじゃん」って感じなので(笑)、新鮮でしたね。
ここでなら、キャリアを活かしながら色々なチャレンジができて、視野も広げられそうだと思いました。
ーー現在、KAICOでどんなお仕事をされていますか。
肩書きとしてはQA担当ということで、商品の品質保証システムを社内に構築することが一番の仕事です。とはいえ人数が少ないですし、やろうとしていることも大きいので、何でもやっています。
ーー様々な業務に携わることにストレスは感じませんでしたか。
それは全然なかったです。これまで大きい企業でルールが決まった中で働いて来ましたが、今は自由にできることが増え、むしろやりやすい部分も多いと感じています。
ーー同じ九州内ではありますが、熊本から福岡に戻ってきて、生活の変化はありますか。
実家との距離が近くなったので、生活スタイルは変わりました。あとは通勤が非常に便利になりましたね。熊本にいた頃は車で30分ぐらいかけて通勤していましたが、今は会社の近くに住んでいるので自転車で通っています。
移住のデメリットはあまり感じませんが、熊本市内の方が、広範囲で生活できる環境が整っていたかなとは思います。熊本市の端に住んでいたんですが、特に娯楽や買い物には困らなかったので。
逆に福岡市は中心に色々集中しているので、郊外に住むと買い物や遊びの選択肢が少なくなります。まあ今はネットで買い物できますし、大した問題ではないんですけど。
ーー福岡に戻ってきて、ご家族の反応はいかがでしたか。
私が帰ってきたことに対して、ありがたい気持ちはありつつ、心配もしてくれています。母からは「自分の仕事に打ち込んで、好きなように生きてほしい」と言われますね。
でも、今は経験を活かしながら新しい仕事にチャレンジできているので、移住ですべてがゼロになったわけではありません。
とはいえ、ある程度積み上げたものをいったん置いてきたことも事実です。「もっと好きにやればよかったのに」と言われると、本当に正しい選択だったのかなと、いまだに悩むことはあります。ただ、あのまま熊本で生活を続けていたらわからなかったことや、感じなかったこともあるので後悔はないですね。
家族とキャリア、両方にとってバランスのよい選択ができた
ーー移住転職には正解がありません。江崎さんのように「何が正しいかわからない」と言う方も、実際にいらっしゃいます。YOUTURNは、そういう率直な思いを共有できる場として、移住者コミュニティの運営もしています。
今、気持ち的に一番負担なのが、コロナ禍でコミュニティが作りづらいことなんですよ。同じような境遇の人達と繋がれる機会があるなら、ぜひ参加させていただきたいですね。
ーーお話を伺っていると、移住のきっかけはご家族のだったにせよ、きちんとご自身のやりたいことを軸に転職されたんだなと思います。
そうですね。何か1つだけを優先させるのではなく、家のことも興味のある仕事も、バランスよく選べて幸せだと思います。
前職では10年間、同じ製品をずっと扱っていたので、違うものがやりたい気持ちもありました。今は近い分野に関わりつつ、色んな企業ともお話できているので、視野が広がって選択肢が増えてきました。
このままやっていけるかどうかは、自分のがんばりにもかかっていると思いますが。
ーーまさしくベンチャースピリットですね。自分がやらないと会社がダメになる、という。
大きな会社にいると、悪く言えばぼーっとしていても給料が入ってくる感覚はありますよね。ベンチャーでは自分が動かない限り、お金は入ってこないと強く感じます。代表をはじめ、KAICOにいるのは熱い人ばかりなので、自分も周りの熱についていってがんばりたいです。
<執筆後記>
移住のきっかけは家族でしたが、同時に「やりたいこと」ができる企業を見つけて転職した江崎さん。後悔はないものの、今も「本当に正しい選択だったのか」と振り返ることはあるそうです。
YOUTURNでは、移住転職という、正解のない人生の大イベントに対し、経験者同士が交流できる移住者コミュニティも運営しています。移住前はもちろん、移住後のサポートも実施していますので、ぜひご相談ください。