<後編>「福岡で経営人材を目指す」移住転職の新しいキャリア戦略

移住転職後キャリアモデル
07/01/2025 更新

前編では、伊原さんが語る「地方で経営人材として活躍するためのキャリア戦略」や、大企業とベンチャー、さらには個人事業主を経て地方企業へ飛び込んだ背景についてご紹介しました。

仕組みの中で守られてきた大企業時代から、自分の力で稼ぐことのリアルを知ったベンチャー経験。さらに、自分の経済圏を広げるために再び組織に飛び込んだ選択。

そこには、単なるスキルや職歴では語りきれない「マインドセット」の重要性がありました。後編では、伊原さんが感じる「変化を楽しむ力」の本質や、今後のキャリア観、そして福岡という場所でどんな未来を描いているのか、さらに深く掘り下げていきます。

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変化を楽しむ力〜不確実性の時代に求められるマインドセット

――変化に対する考え方について聞かせてください。

伊原さん: 先のことって分からないなと思ってて、5年前に今のことを想像できたかというと、一個もできていなかった。今もそうですし、あと5年後何をしてるかも分からない。FCCテクノで5年後にどうなっているか分からないし、2、3年してまた個人事業で行きたいと言ってるのか、何をしてるのか分からない。

当然、今の現時点ではFCCテクノで結果を出さなきゃと思ってるんですが、先のことは分からないからこそ、今あるところで仮説検証をひたすらしていくしかない。ただ、多分なんとかなるだろうという変な自信だけはあって、なんとなく大丈夫だろうとずっと思ってるところです。

高尾: 変化対応力がある方とない方がいて、変化対応力がある方は多分どうにかなるだろうと思って変化を起こしに行くから、その起こった変化に対して対応する力が身につくと思うんです。

でも変化対応力が身につかない方は、変化させに行くということに対する躊躇が大きいんだろうなと思っています。

――変化を楽しめるかどうか、福岡に移住された方々はまさに「そちら側の人」です。

伊原さん: そもそも福岡に行くという判断をしている時点で変化するわけです。転職するだけだったら東京でもいいわけで、福岡に行くのは絶対に変化の一歩です。それがワクワクしないんだったら、ちょっとやめた方がいいと思います。

変化する・しないどちらを選んでも、良いことと悪いことが起こる可能性があると思います。だったら変化してマイナスに行った方が、こうしたらマイナスになるんだということが分かる。

でも変化せずにずっと行ってると、後悔先に立たずで、「福岡に行けるチャンスは5年前にあったのに、なんで行かなかったのかな」となる。どっちにもプラスマイナスがあると思ってるので、だったら変化をする方を楽しめる人がやっぱり福岡に来るべきだと思いますね。

高尾: 確実性の追求を多くの方はしたがる。そっちの方が安心なんですね。でも確実性の追求ほどコストの高いものはない。

伊原さん: 本当にそう思います。今の変化の多い時代に確実性を追求しようとしたら、確実性を追求していたもののベースや、もともとのルールがすぐに変わってしまう。だったら全部それがコストになって無駄になっちゃう。

でも変わるということを前提に、確実性の追求よりも不確実性を許容していく力、その不確実なものを許容しながら前に進んでいく、そういうマインドセットの方がいいのかもしれないです。

移住転職成功の秘訣は「やりたい気持ち」を大切にすること

――移住転職を検討している方へのアドバイスをお聞かせください。

伊原さん: 最初は年収は下がるかもしれないですが、でも福岡に仕事はあると思ってる。福岡の中でも、マネジメント領域はまだまだ求められているところがいっぱいあります。バリバリできる人やマネジメント、経営人材を欲しいと思ってるところはいっぱいあるので、働く余地はあると思います。

それを今の時点で年収を確約してくれ、絶対に年収が下がらないところを紹介してくれと言われると、それは一回福岡のコミュニティに来てみてやってもらえないと、あなたがやれるかどうかもこちらも分からない。

でもそれを「今と同じ給料800万絶対です」と言われると、それは来てみて一緒にやりましょうよという話だと思います。

高尾: 僕は転職をお手伝いしてて、マネジメントやいいポジションに行かれる方って、入り口のポジションを気にしてないんですよ。むしろ「一兵卒からやらせてくれ」という感覚で入る方の方が、グーンと後に上がってる。

最初馴染んで、一緒に机並べて同じ釜の飯を食って信頼されてから、みんなに認められながら上に上がっていく方が、上に立った時にまとめやすくなるのを分かってるから、そういうアプローチを取るんだろうなと思ってます。

――東京のハイクラス人材が地方でサスティナブルな生き方をするためには、「自分で稼げる力を持つ」のが重要だと考えています。

伊原さん: それも自分の経済圏を作っていく一環ですよね。あとは、最悪東京に戻ればいいと実は思ってるんですよ。うまくいかなければ。多分ですが、前の会社に戻りたいと言ったら戻れると思うんですよね。

本当に福岡でダメだったなと思ったら、前の上司に頭を下げて、「一緒に働かせてください。すみません、戻りたいです」と言えば、「戻っていいよ」と言ってくれると思います。

関係性もちゃんと作って、変な辞め方してなければ、失敗したら3年ぐらいで戻ればいい。だってうまくいくなんて分からないじゃないですか。

私も福岡に来て最初年収が200万ぐらい下がってるんで、最初の一発目から。でもそういうもんだし、しょうがないと思ってますし、逆にまたそこから上げなきゃと思ってる。

絶対今の給料をキープしたいんだったら、やめられないですよね。福岡に行きたい思いの裏に、給料を上げたいと思って福岡に行きたいんだったら、一歩目としてはちょっと違うかなと思います。

不安との向き合い方〜「なんとかなる」という心の余裕の作り方

――不安に向き合う伊原さん流のメソッドがあれば教えてください。

伊原さん: どっかのタイミングで不安で夜も眠れないというのがなくなったんですよね。昔はめちゃくちゃありました。私はバスケットを大学までやってて、試合の前とか寝れなかった。

次の試合で活躍できなかったらどうしようとか、シュート入らなかったらどうしようとか、睡眠薬を飲んでいた時期もありました。社会人になってプレッシャーを感じることが減って、なんとか食っていけるだろうというのがどっかにあるんですよね。

20代後半ぐらいから、あんまり不安に感じることがなくなりました。「なんとかなるんだ」と思って。案件がトラブってたりお客さんにめちゃくちゃ怒られても、夜寝る5分か10分前ぐらいにはもう忘れてる。昔はずっとグルグル考えて寝れなかったんですが、今考えても仕方ないしって思うようになりました。

――歳をとるにつれて「本当に怖いのかどうか」のハードルが下がってきた。

でもやっぱり体が強いのかもしれないです。笑 体もでかいしベンチプレスも100キロ上げたりするし、健康なんですよね。だからやっぱり、まあ死なないだろうという感じです。

体に不安がないから、最悪バイトでもいいと思ってるし、ITやAIじゃなくても別の職でもいいと思ってるし、バイトでひたすら食いつないでもいいと思ってる。

給料も下がるけど、何を求めるかです。福岡で600万や500万でも生きていけるかと言うと生きていけると思うし、住む場所を選ばなければ安いところに住める。

そういうふうに考えれば、YOUTURNに来ている人たちって、東京のある程度のクオリティをずっと維持しなきゃというマインドが強すぎるのかなと思って。でも福岡だったら生活水準やお金も下げられるわけです。特に家賃は絶対下がるから、年収200万円ぐらい下がってもなんとかなると思います。

福岡移住で本当に大切なのは「誰と働くか」という価値観

――伊原さんにとって、仕事における一番重要な価値観は何ですか?

伊原さん: 誰と働くかはずっと価値観にありますね。スカイディスクの時にも内村さんの人柄がすごく好きで、この人のためにやろうと思って働いてました。今はFCCテクノの西村さんや緒方さんと一緒に働きたいなと思ってやっているので、「この人と一緒に働きたいな」というところが価値観にすごくあります。

人生の中で3分の1以上一緒に過ごす相手です。それって家族と同じくらい過ごす時間が長い、下手したら家族よりも長いかもしれない。なのに嫌な人と過ごしたくない。どうせだったら自分が好きな人や一緒に働きたいと思う人と過ごしたいです。

高尾: 今日僕は伊原さんと話をしてて、経営人材に必要な思考法を垣間見ました。伊原さんって物事を多角的にいっぱい見てるじゃないですか。いろんな視点から一回見てみて、この可能性もあるこの可能性もある、じゃあもう何でもありじゃんとなって、じゃあ俺はどうしたいのかに最後行くと思うんですよね。

これができるから年収についてもいろんな角度で見れるし、仕事も別に本当にこれじゃないとダメな仕事なんてないと思うと言うのも、いろんな角度から見て、結局仕事を通じて何を得てるのかという話でしかない。

経営者や経営人材って、要は意思決定しなきゃいけない立場になるので、決める上でいろんな視点から見て、結局何選んでも後悔するかもしれないし、じゃあ俺がやりたいのはこれで、かつそれがみんなにとってもいいものに、という風になる。ここを鍛えているような気がしました。

――最後に、移住検討している読者の皆さんにメッセージをお願いします。

伊原さん: 結局やりたいことが何かなんですよね。福岡に行きたい人は福岡に行きたいんですよ。福岡に住みたいんですよ。それを年収を理由に、福岡に行けないと思っちゃう。行ってみれば、いろんなことが実は福岡でできるはずなんです。年収が一つのハードルではあるのは間違いないんですが、自分の気持ちは福岡に行きたいわけです。それを大事にした方がいいと思います。

福岡に行く、その代わりにいろんな変化がある。年収は変わる、でもここは変わる、ここは変わらない。そういうのをトータルで見て自分がやりたいことをやればいい。やりたいは一番強い動機で、この動機が全ての始まりです。結果的にいろんな言い方をしていろんな見方をして、やりたい気持ちをいろいろカバーしてますが、根底はやっぱりやりたい気持ち。

私は変化は楽しいと思ってるので、自分の気持ち、やりたい気持ち、それがやっぱり強い。福岡に行きたかったというのも、高尾さんに2018年に初めて会った時に、「福岡いつか帰りたいんですよね、でも今帰れない」という話をしながら、「帰れるじゃん」となった時に、じゃあ帰ろうよ。福岡に行きたいがやっぱり強かったんですよね。

高尾: やっぱりそこに正直になるべきだと思います。いろんな不安は誰でもあるから、でもその行きたい気持ちが一番大事です。

広い入り口から入って狭めていく方がうまくいくような気がしていて、今迷っている方って、年収はやっぱりこれ以上、業界はこう、私の専門性がこうだからこう、となると、入り口めちゃくちゃ狭めにいって、この狭いところから入っていっても、多分その先あんまり広がらない。

だから入り口広げるには、もうとにかく行きたい気持ちにして、行ってみればなんとかなるかもという方で行った方が開けるのかもしれないですね。

伊原さん: 結局福岡に来た周りの人たちは、福岡に来て満足はしてますからね。キャリアや仕事というところで、合う合わないはあるだけで、でも入ってみないと分からないし、やってみて気づく。

できればその会社でずっと長くやれるのがいいですが、うまくいかなくてもそれはそれ、また次のキャリア、次の仕事に行けばいいだけだと思います。

執筆後記

「地方移住 = キャリアダウン」という固定観念を覆す、伊原さんの体験談はいかがでしたでしょうか。大企業での安定した環境から飛び出し、ベンチャー、個人事業主、そして再び組織へと、変化を恐れずに自分らしいキャリアを築いていく姿勢からは、新しい時代の働き方のヒントが見えてきます。

特に印象的だったのは、「やりたい気持ちを大切にする」という言葉です。年収や肩書きといった外的な条件に縛られるのではなく、自分が本当にやりたいこと、一緒に働きたい人、住みたい場所といった内発的な動機を重視する。

そして、不確実性を許容しながら、変化を楽しむマインドセットを持つ。これこそが、これからの時代に求められるキャリア戦略なのかもしれません。福岡には、そんな新しい働き方を実現できる環境があります。

経営陣との距離が近く、個人の裁量が大きく、多様な経験を積むことができる。そして何より、志を同じくする仲間たちがいる。

そんなコミュニティの中で、あなたも新しいキャリアの可能性を見つけてみませんか。YOUTURNでは、一人ひとりの価値観に寄り添った移住転職をサポートしています。「福岡で働く」という選択肢に少しでもご興味がある方は、ぜひ一度ご相談ください。

不確実な未来だからこそ、やりたいことに素直に向き合う勇気を持って、新しい一歩を踏み出してみませんか。

著者 津金 大樹
2022年からYOUTURN取締役、2023年より代表取締役就任(共同代表)。YOUTURNの移住転職サポート事業立ち上げ時の2018年から参画。ウェブマーケティング、コンテンツ制作を担当。 当社就任以前は、株式会社LITALICOで新規事業開発部に所属し、プラットフォーム立ち上げ。それ以前は、結婚式場の口コミサイト「みんなのウェディング」にてウェブマーケティングやコンテンツ制作、プロダクト開発に従事。新卒で日立製作所に入社。1984年福島県生まれ。

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