コンビニチェーンからIT企業のHRへ - Uターン転職で見えた”自分で前に進む感覚”

私の移住転職ストーリー
05/19/2025 更新

「東京のスピード感のなかにいると、あたかも自分自身も成長している錯覚に陥ることがある。九州に戻ると、生活のリズムが少し緩やかで、自分の動きが相対化しやすい。

自身の成長をより明確に体感できる」——こう語るのは、大学卒業後、大手コンビニエンスストアチェーンに入社し、約10年間のキャリアを積んだ頴川さん。

東京本社での人事やマーケティングの経験を経て、2022年にLINE Fukuoka(現:LINEヤフーコミュニケーションズ)へのUターン転職を実現しました。

「かっこいいビジネスマンになる」という学生時代からの変わらない軸を持ちながら、新たな環境で常に自身の成長を追求する姿勢と、九州の企業と連携した新卒採用の取り組みについてお話を伺いました。

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「憧れられる大人」になりたかった

——まずは簡単に頴川さんのご経歴を教えてください。

鹿児島で育ち、福岡の大学を卒業後、2013年に大手コンビニエンスストアチェーンへ入社しました。店舗スタッフからスタートし、1年後に店長に。

以降、宮崎でスーパーバイザーとして複数店を支援し、その後は東京本社で採用、労務、マーケティングを経験。気づけばあっという間に10年が経っていました。

——新卒の就職活動時は、コンビニ業界に特別な興味があったわけではないとか?

正直に言うと1ミリも興味はありませんでした。笑 就活の軸は業界ではなく「かっこいいビジネスマンになりたい」という、当時21歳の自分が抱いた抽象的な憧れでした。

「どういう企業に行きたいか」というよりも「どういう人間になりたいか」が先にあったんです。たとえば、サッカー選手であれば誰もが憧れる存在がいるけれど、ビジネスマンには憧れる人が少ない。

私は、ビジネスマンとしてみんながなりたい、かっこいいと思うような存在になりたかったんです。

「かっこいい」を構造分解すると、生き生きと仕事をして結果を出し、コミュニケーション能力や知識があり、タフで、経営を語れる人。

その経験値を最速で得られそうだったのが同社だったんです。キャリアの浅いうちから、店長として「ヒト・モノ・カネ」をリアルに動かせた経験は大きかった。

店舗業務での修羅場で磨き続けた「変化対応力」

——入社後数年間の店舗での仕事はいかがでしたか。

1年目は支店勤務と店舗勤務を経験しました。支店では先輩の仕事を手伝いながら、朝7時に出社して掃除をするなど、少しでも自分の価値を出そうと努力していました。

その後、九州道のパーキングエリアにある店舗の店長として配属。当時は全国でもトップ10に入るくらいの売上があるお店で、心身ともにかなりハードな経験でした。

——店長としての課題は何でしたか?

そこは課題の多い店舗で、私が配属されたときは人員整理が行われた後で、少ない人数でどう回していくかというのが最初のミッションでした。

また、パーキングエリアの店舗なので、一定数のお客さまに対していかに利益を上げるかが重要となります。

仕入れをうまく管理したり、スタッフにお客さまへの声かけを徹底させたりと、1円でも多く稼ぐ方法を学びましたね。

それをアルバイトスタッフに落とし込む難しさもありました。時給のために来ている彼らに、売上を上げることへのモチベーションをどう持ってもらうかが最も苦労した点です。

——その後のキャリアについて詳しく伺えますか。

スーパーバイザーのアシスタントになり、複数店舗を管理するようになりました。そして3年目には正式なスーパーバイザーとして宮崎に赴任し、約3年間その職務を務めました。

宮崎では都城や日南エリアなど、広範囲の店舗を担当しました。

オーナーさんが「売上を上げるとお客さまが増えて忙しくなるから上げなくていい」という店もありましたが、3年かけて課題店をテコ入れし、数字と組織を立て直しました。

——東京本社に異動されたのはその後ですね?

はい、5年目には人事本部に異動になりました。「人を育成することに興味がありそう」「どこにいても一定の成果を出せている」という理由で選ばれたようです。

人事部では採用と労務管理を約4年間担当。最後の1年はマーケティング部に異動し、新商品のプロモーション企画や広告制作などを担当しました。

正直に言うと、この時期に成長している実感はあまりなかったんです。

店舗時代は「変化が来そうだからこうしよう」という能動的な”アクション型”の仕事が多かったのに対して、たとえば労務だと”リアクション型”の仕事が多かった。

「国の方針が変わったからこうしなければ」という変化に対する仕事をしていく印象で、自分の性格的にはリアクション型よりもアクション型の方が向いていると感じました。

——そうした気づきが、転職を考えるようになったきっかけだったのでしょうか。

そうですね。自分のコアスキルが社内の利害調整力しか伸びていないと気づいたんです。巨大組織ほど調整は重要ですが、30歳手前で「このままではまずい」と焦りを感じるようになりました。

Uターン転職を選んだのは、言語化できていた課題感×身体的な感覚

——転職と同時に九州へのUターンも検討されたということでしょうか。

これは言語化しづらいのですが、地元に戻るという選択は論理ではなく、身体的な感覚の影響が大きいんです。

ただ、「帰りたい」というよりは、「自分が価値を出すのであれば九州がいいな」という思いがありました。

言語化できているスキル的な課題感と身体的に捉えている課題感。この2つを解決する方法として、九州で業種を変えてチャレンジすることを選びました。

——数あるエージェントのなかで、なぜYOUTURNを選んでいただけたのでしょう?

私の経歴や経験だけでなく、そのときの情緒を踏まえて提案してくださったのがよかったです。

よくある「この職種でこの経歴ならこれだけの年収」というスペックマッチングではなく、東京残留や社内異動という選択肢も並べてくれた。

「利害調整力を超える学びを得たい」という本音に刺さる求人を示してくれたのが大きかったですね。

——YOUTURNを通してLINEヤフーコミュニケーションズとの出会いがあったわけですが、どのようなポイントに惹かれましたか。

立ち上げのタイミングだったこと、特に新卒採用を始めるタイミングだったことに魅力を感じました。

ジョブ型の働き方が注目され、新卒一括採用に批判的な論調も起きつつあるなか、あえて新卒採用に挑戦するという点にワクワク感がありました。

また、スーパーバイザーとしてのコンサルティング能力、人事での採用関連の知見、マーケティングでの企画・分析力など、自分のこれまでのスキルを掛け合わせて活かせる場だとも思いました。

新たな環境にアジャストし、プロジェクトマネジメントのスキルを会得

——LINEヤフーコミュニケーションズに入社早々に、新卒採用を任されたと伺っています。

入社当初は「好きなようにやっていい」と言われていたので、前職時代の感覚でやっていたら、いろいろなハレーションが起きてしまいました。

前職で培った高い熱量やスピード感が、新しい環境では受け入れられないことがあったんです。

理解しているつもりでしたが組織が変わると、今まで培ってきた仕事の進め方やコミュニケーションスタイルが大きく異なることを強く認識させられました。

そこから半年くらいかけて、どうやって自分をアジャストしていくかを学ぶことができましたね。

——どのような形で九州の企業と連携するようになったのですか?

入社後に、九州の企業が参加するUターン志望の学生に向けた就活イベントに出席したことがきっかけでした。

そこで「なぜ東京や大阪の学生を採用しに行く必要があるのか」という疑問を持ったんです。九州にいる学生だけでも十分なのに、なぜ地元の学生を育てないのか。

そこから西日本鉄道や西日本新聞と連携して、2023年5月に就活準備セミナーを開催しました。

この評判が良く、その後麻生グループや九州朝日放送、福岡ソフトバンクホークスなどほかの企業も加わり、「九州ジョブフェス」というイベントに発展していきました。

現在も着々と地元企業との連携が広がっています。

——新卒採用の仕事を通じて成長を感じる部分はどこですか?

プロジェクトマネジメントスキルの成長を実感しています。前職では新卒同期が多く、共通認識があったため細かなマネジメント意識は薄かったように思いますね。

一方、現職では多様なバックグラウンドを持つ中途採用者との協働が多く、体系的なプロジェクト管理の必要性を痛感しました。

マーケティング経験で培ったフレームワークを活用し、「目的・目標・戦略・戦術」の階層で整理・共有するアプローチを確立できたことは大きな成長点です。

現在は新卒採用、人材育成、九州企業とのコラボレーションなど大小10のプロジェクトを並行管理していますが、以前のような精神的・身体的な限界感はなくなりました。

これからも”ゴールの先”を目指して、走り続ける

——「かっこいいビジネスマンになる」という目標は今も持ち続けているのでしょうか。

はい、それだけは学生の頃から変わっていません。ただし、「かっこいいビジネスマン」の定義は、自分が成長するにつれて変化していきます。

だから常にゴールしていないんです。プロジェクトマネジメント力がついたと感じても、さらに先の自分を追い続けています。

走り続ける限り、新しいアウトプットが生まれると信じています。

——頴川さんから感じるエネルギーの源泉を垣間見た気がします。最後に、Uターン転職を迷っている方へのメッセージをお願いします。

東京にいると、周りの世界がものすごく速いスピードで進化していくので、あたかも自分も成長しているような錯覚に陥りがちです。

でも、実際には「周りが動いているだけ」で、自分が本当に成長しているかどうかは見えにくくなります。

九州に戻ると、東京と比べて相対的に速度が遅く感じます。特に東京のスピード感を知っている人ほど、その違いを痛感できる。

だからこそ、「自分が変わらなければ」という危機感が生まれ、自分自身を成長させるモチベーションになるんです。

東京にいても知識や経験は増えますが、「自分自身が確実に成長している」という実感が欲しいなら、九州に来ることをおすすめします。

自分で自分をコントロールして成長させるには、とてもよい環境だと思っています。

編集後記

本インタビューを通して、キャリア形成における「環境」と「自己認識」の重要性を再認識しました。

頴川さんの「東京にいると周りが動いているだけで自分も成長している錯覚に陥る」という言葉は、多くのビジネスパーソンの心に響くものではないでしょうか。

地方回帰が進む現代において、「地元に帰りたい」という感情だけでなく、「自分を成長させるためにはどの環境が最適か」という視点での転職・移住の選択肢が広がっています。

特に、LINEヤフーコミュニケーションズのような先端企業が地方にも増えていることで、キャリアとライフスタイルを両立させる可能性が高まっています。

頴川さんのように「かっこいいビジネスマンになる」という軸をブレずに持ちながら、環境を変えることでさらなる成長を遂げる姿勢は、これからのキャリア形成において大きなヒントになるでしょう。

著者 津金 大樹
2022年からYOUTURN取締役、2023年より代表取締役就任(共同代表)。YOUTURNの移住転職サポート事業立ち上げ時の2018年から参画。ウェブマーケティング、コンテンツ制作を担当。 当社就任以前は、株式会社LITALICOで新規事業開発部に所属し、プラットフォーム立ち上げ。それ以前は、結婚式場の口コミサイト「みんなのウェディング」にてウェブマーケティングやコンテンツ制作、プロダクト開発に従事。新卒で日立製作所に入社。1984年福島県生まれ。

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