仕事をしていて、初めて“泣いた”日

藤久保:代理店時代のツテで、当初は歯科医院向けの経営コンサル、マーケティングのお手伝いから事業をスタートしたんですが、ありがたいことに生活するには困らないほどの取引は頂いていて。


高尾:それはすばらしいですね。しかし、起業家としてのモチベーションは満たされない、という感じたったのですか?


藤久保:ええ。元々業界知識を得るための手段でやっていましたから。

そもそもグロービスの先輩の「起業した会社を15億円で売却」というのに感化されていますからね。

「これくらいじゃダメだ」という思いは常々あったんです。真のスタートアップ企業は、やはり世に無い新しいサービスでチャレンジングな事業をしていくものだと考えていました。また本当にたった1人で起業したことも、当時のモヤモヤにつながっていたのかもしれません。1人だとなんとかなってしまうし、力を振り絞る動力としては、やはり弱いんですよね。


高尾:創業期だと「仕事がなくて食べられない」という話が多いのですが「食べられるから踏み込めない」という感じだったんですね。リアリティがありますね。その後、どうやってブレイクスルーされたのですか?


藤久保:そんなとき『f(2.0)』の勉強会で知り合ったある会社の社長の方から「人事や採用フローなどを1年間手伝って欲しい」と言われたんですね。私が起業したこともすごく喜んでくれていて「ぜひ一緒に」と誘っていただいた。

正直、私もありがたいお話でした。しかし、やはり、引っかかるところがあり……。


高尾:デンタルじゃないということでしょうか。


藤久保:そうです。1年間もその会社の重要な人事・採用領域に本気で関わるとなると「DentaLightの成長にコミットできない」と思った。

「それでいいのか」と本当に何度も何度も考え抜いて、結果、断られることを前提に、雑な企画書に何千万円という見積もりをつけて出したんです。失礼なことをしたと思います。

ただ、真正面から「受けられません」と言えなかった。


高尾:はい。わかる気がします。


藤久保:当然、ものすごく怒られました。「ふざけんな!」みたいに。正直、私も声を出して泣いた。「DentaLightとしての仕事に専念します!」と告げながら。

後にも先にも、仕事中に泣いたのは、あのときだけですね。


高尾:複雑な思いが伝わります。


藤久保:ただ、その時、ようやく腹が決まりました。「デンタルで世の中を変えたい」。そのためにどうすればいいか、集中できるようになった。そして『myDental』と『ジニー』が生まれたわけです。

toB、toC、サブスクリプションも視野に

高尾:『myDental』と『ジニー』に関して、あらためてローンチの経緯を伺えますか?


藤久保:はい。そもそも、歯科医院の現場が労働環境として多くの課題を抱えていることがわかったんですね。

患者さんの予約台帳が手書きの紙であったり「サブカルテ」といわれる各医院が患者さんごとに書いている個人台帳のようなものも手書き。さらに予約を忘れた患者さんに電話する手間など、多くの仕事がアナログ。

そのため、スタッフの方が煩雑な業務に追われてしまい、コストが高くなっていた。ここをテクノロジーでシステム化すれば、相当効率化が図れる、と思ったんです。


高尾:そうすれば、歯科医院の経営も安定すると。なるほど。それが歯科医院向けのクラウド型のシステム『ジニー』ですよね? 「お大事に」の言葉から名前をつけたという。


Dentalight interview 02 sub 1
▲予防歯科のための予約管理・コミュニケーションシステム。キャンセル防止、治療中断の減少、業務不可の軽減といった効果が期待できる。https://genie-dc.com/

藤久保:はい。ただ、構想は確かに医院向けの『ジニー』からはじまったのですが、患者さん向けの『myDental』のほうを先に開発したんですよ。


高尾:それは何か理由が?


藤久保:実は私には、当初、患者向けアプリの着想はなかった。けれど、今、うちのCTOをしているエンジニアがまず入ってきて変わったんです。

グロービスの同級生のツテでしたね。彼はもともと富士通関連のエンジニアで九電のシステムもつくってきた凄腕だったのですが、面白いのは自分の奥さんのために育児日記のアプリを趣味でつくって、それが12万ダウンロードされた、という経歴の持ち主だったんですよ。いまだにその収益で自分の家のローンを払っているという。


高尾:それすごいですね。


藤久保:つまり吉田はスキルだけじゃなくて「エンドユーザーのために」というマインドがとても強いんですね。

その彼が「医院向けだけじゃなく、患者さん向けのアプリが必要じゃないか」と。

そこで患者側のアプリとして、診察券代わりに利用できる『my Dental』を開発。アプリで予約日時をアラームで通知したり、歯科医院からのお知らせを受け取ったりすることもできるような仕組みです。


Dentalight interview 02 sub 2
▲スマートフォンが診察券代わりになるアプリ『mydental』。医院からのお知らせなどでコミュニケーションが取れたり、予防医療の知識も学べたりする。

高尾:一方で『ジニー』も開発に着手したと。


藤久保:このタイミングで、またエンジニアがジョインしてくれて、彼が担当しました。

予約台帳をオンライン上でできるほど、予約忘れの防止のため自動的にリマインドメールが送られる。

歯のメンテナンス時期が近づいた患者リストを自動的に作成し、集客につなげるというった具合です。ちなみに彼とは、私がつくった勉強会『f(2.0)』がきっかけで、知り合った仲間なんです。


高尾:『f(2.0)』というか、ランチェスターが伏線のように効いていますね。

こうして、医院向けと患者さん向けにテクノロジーによってデンタルの利便性を高める。治療がしやすくなる。ひいては健康寿命を伸ばすという社会的意義にまでしっかりとリーチしてきたわけですよね。


藤久保:いわば歯科医師の方々のニーズを満たすために…という視点ではなく、走りながら「日本人の健康寿命に貢献する」という大きなビジョンとミッションが生まれてきたんですよね。

ぐっと視界が広がりましたね。結果として多くの歯科医の方々、患者さん、あるいは投資家の方々にも声が届きやすくなった気がします。


高尾:いわゆるB向けとC向けを得たことで、ビジネスモデルとしてもとても広がりが出ましたよね。


藤久保:そうですね。まず『ジニー』はSaaS(※4)であって歯科業界のデータが蓄積される。

これによって利便性だけじゃなく、予約や治療計画の精度も高まり、マーケティングツールとしてとても最適化されたものになると思います。一方で、患者さん向けの『myDental』は次のビジョンとしてPHR(※5)の概念で、患者自身がヘルス管理をできるようにしていきたい。

それが広がれば、歯への保険だったり、たとえば、サブスクリプションなども視野に入れられる。

いわゆる、予防医療のハブになるわけです。また企業検診や自治体検診で『myDental』と紐づけできれば、飛躍的にデータ量は増えるので、そういった方面へのアプローチも必要だと思っています。


※4……Software as a Service。必要な機能を必要な分だけサービスとして利用できるようにしたソフトウェア。
※5……パーソナル・ヘルス・レコード。その人の健康情報を一元管理できる生涯型電子カルテ。


高尾:すばらしいですね! サブスクリプションとしては、どういうことを考えているのですか?


藤久保:歯磨き粉や歯ブラシをサブスクリプションで届けたいと思っています。

今は「なくなったから、次をなんとなく買う」という方が多いと思います。ですが、PHRのデータを活用すれば「ひとりひとりに合ったものを定期的に送る」といった方法が考えられます。

そして、こうしたデータを持っているのは、日本でもうちしかないんですよ。

歯ブラシ、歯磨きなどを扱う某大手メーカーの時価総額はいま7,000億円くらいですが、私たちはその会社よりもお客様の正確なデンタルデータを持っている。さらにその顧客、カスタマーとなる to C側、歯科医院のデータとの関係性も構築できています。

私は本気で時価総額1兆円企業をこの領域でつくれると踏んでいます。福岡からね。


高尾:なるほど。とても可能性を感じられる話ですね。


藤久保:また、最近、歯は“健康の入り口”だと考えられるようになってきて、厚生労働省も未病、つまり予防医療の一環として歯科保健対策に乗り出しています。

というのは、歯の残存数が咀嚼力、噛んで食べる力に影響します。

食べることができなくなれば、身体の弱体化にもつながる。また歯周病は心臓病や糖尿病など全身疾患に関係しているとも言われています。

そういう意味でも、歯をケアしていくことが健康寿命につながるわけです。行政も歯科口腔保健の推進を図っています。


高尾:歯科医師として人々の健康を担う志をもってやっている人も多いと思います。だから、御社の考えに共感する人は増えていくでしょうね。


藤久保:やはり大きなビジョンが多くの人の心を動かすと思うんです。

こういうことをやっていけば革新的で情熱がある人たちの関わりも増え、歯科業界をもっとよくするムーブメントを起こせると思っています。

さらにデンタルがハブとなり、内科や総合診療科などのメディカル分野やヘルスケア分野と連携しながら、いろんな地域で一緒に変えていける人が増えて、地域の健康を支えていくような態勢になれば、嬉しい。

そういう形にできるのが理想です。

人生の熱狂を味わって欲しい

高尾:そういう意味で一緒に働く人材は重要ですね。どういうメンバーにジョインしてほしいと考えていらっしゃますか?


藤久保:DentaLightでは自分の人生のあり方を全員発表してそれを共有しているんです。

自分が成し遂げたい人生がDentaLightにマッチすればジョインしてくれたらいいですね。

起業したい方は大歓迎。九州をどう活性化するかと考えたら、うちからどんどん輩出していきたいと思っているんです。

ただ1つ、DentaLightにジョインする方には、お願いしたいことがあります。健康を意識して体現してほしいんです。

私たちは、歯科業界で健康に向けた取り組みをしてます。、そうした社会課題を解決する仕事だから、自分たちは表面的でなく、健康を体現したいんですね。

「健康が大事」と言いながら、タバコを吸っていたら説得力ないですよね?


高尾:確かにそうですね。表向きは言うけど、自分たちができてないっていう会社はたくさんありますからね。


藤久保:言うこととやることを同じにする、正直な組織でありたいと。まだまだ理想とは程遠いですが、組織作りも今後挑戦していきたいです。

あとは「地方発で時価総額1兆円企業をつくる」ことにワクワクできる方、大歓迎ですね!

東京だと、スタートアップで時価総額1,000億円つくる会社はある。でも、九州だと地場の大手優良企業くらいしかその領域に到達していません。そこを抜いちゃうような組織をつくれれば、影響力を持ててよりワクワクすることができますよね。


高尾:20年前、東京でビットバレーと言われたベンチャー企業の勃興が今、福岡で起きている感じですね。

20年かけて楽天やDeNAは大企業になっていきましたが、今の福岡の起業家コミュニティを見ていると、10年でそのポジションに行ってしまう勢いを感じます。

この2~3年で福岡で動ける人はかなりおもしろい経験ができるはずですね。


藤久保:そう思います。今、明治維新的なことを起こすのは起業家なんじゃないかと思っています。

そのために大事なことは、ポジションをとること。東京でやるのもいいんですけど、福岡というタグで会社を作って、大きい会社を作ったっていう経験を元に何かをするもよし、街づくりに携わるのもよし。

ただ30年後、40年後に人生を振り返ったとき「DentaLightという場所で、ものすごい熱狂したな、楽しかったな」と振り返られる。そんな時間を共有したいし、そんな時間を求めている方に来て欲しいですね。


高尾:確かにワクワクしますね。今日はありがとうございました!


株式会社DentaLightの求人情報はこちら


Dentalight interview 02 sub 3

会社情報

所在地福岡県福岡市博多区住吉3-1-18 福岡芸術センター1503号
設立年月2013年10月
社員数12名
関連業界システム開発、コンサルティング業
urlhttp://dentalight.co.jp
詳しい会社概要はこちら