再生からリグロース(再成長)|FCCテクノ座談会【後編】
2021年の代表交代後、2年間の「事業再生」期間を経て「リグロース(再成長)」への一歩を踏み出したFCCテクノ。社長の西村さんをはじめ、事業再生のフェーズから携わってきたメンバーと、リグロースに向けて新たに入社したメンバーにお話を伺いました。
【後編】では、それぞれの捉えるFCCテクノの「リグロース」について、お話をお聞きしています。
前編はこちら:「福岡の地で、自律した人が集う会社|FCCテクノ座談会【前編】」
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西村秀星さん(株式会社FCCテクノ 代表取締役)
緒方伸一さん(同 執行役員)
仲田哲也さん(CEO室兼Solution部マネージャー) 仲田さんの移住転職ストーリーはこちら
中元曜子さん(CEO室マネージャー) 中元さんの移住転職ストーリーはこちら
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リグロースに向かい、迷走するディスカッションを楽しんでいる
――それぞれのお立場で、FCCテクノのリグロースをどう捉えていますか。
緒方:私が入社してからこれまでの2年間は、西村が引っ張ってきた再生の時期でした。その間にまいたビジネスの種のいくつかから芽が出てきたので、どれを育てていくのか探りながら進めている段階です。
もちろん利益を出すという大前提はありますが、その根本には職員のためという思いがあり、代表の西村は私利私欲なく職員の幸せを本気で考えています。
2年前と比べ、選択肢が格段に増えました。今いるメンバーと一緒に、凝り固まった経営管理手法に縛られず自立した歩みで進められるところに魅力を感じます。
西村:リグロースを掲げてはいるものの、正直なところ今は迷走しています。でも迷走するディスカッションを楽しんでもいるんです。
2023年度はまさにリグロースの初年度ですが、どう成長していくのか。私たちにとって、経済的な指標だけが豊かさではありません。成長とやりたいことのバランスをどうとるかを真摯に話せる今の環境が、私にとっては最も大きな再生の成果ですね。
私たちは新進気鋭のスタートアップのように、圧倒的な成長を求められません。FCCテクノに集まってくれた職員が幸せであることを第一義に考える事ができます。
緒方:今期から、様々な立場のメンバーを集めて「未来会議」というものを始めました。目先の課題解決だけではなくて、究極的に、私たちはどうありたいか・どうあるべきか。若手からシニアまで職員一人ひとりが考え、フラットに議論を交わす場です。リグロースを自分事として捉えられる人を増やしていきたいと思っています。
――仲田さんはどのように考えられますか。
仲田:私は再生の仕上げに近い時期に加わったので、会計の管理状況や社内のルール・各種情報の整備状況など、入社した時点で「整った会社」だと感じました。ということで、再生とリグロースの違いを体感的には捉え切れていないのが本音ではあります。
まもなく入社から9か月が経ちますが、まだまだ自分が貢献できるところを探している段階であり、9か月楽しくやれているのが手ごたえでしょうか。
今、私は西村から“なぞなぞ担当大臣”と呼ばれているんです。
西村:仲田の視座できちんと「問い」を立て、うまく言葉で整理することが、彼の得難い資質です。
彼の美徳として、「しっかりと形に残ったもの」以外は「できていない」に分類されるんです。例えば売上が1億円上がれば彼は「売上1億円」を成果とみなします。
適切な問いを立てられるのが仲田のバリューですが、リグロースに向けて迷っている段階では数字や形になっていない。なので「9か月楽しく過ごせたのが手ごたえ」という言い方になる。仲田の在り方は、事業に対して率直であろうとする我々としても、大事にしていくべきスタンスだと捉えています。
仲田:私はディスカッションが好きなんです。噛み合う議論の応酬でも、一見無駄に思えることでも。昨期の後半辺りからCI(コーポレート・アイデンティティ)についての議論を進めていますが、そういう抽象的なものの整理や深掘り・言語化などは特に面白いと感じます。
まさにこのCIの見直しというのがリグロースを象徴するものになるのではないでしょうか。根本の哲学を整理し、それをマーケティングに繋げていくことは勿論、社内への浸透をいかに進めていくか。数値として見えにくい取り組みですが、今期以降の成長を加速させる鍵の一つはここにあると考えています。
――中元さんは人事・採用を担うお立場からいかがですか。
中元:管理業務における「脱・西村依存」が私のテーマです。今は賞与計算や人事評価の取りまとめも西村が担っていて、西村が注力したい部分以外にもリソースが割かれているんですね。
再生フェーズの2年間は、そのやり方がベストだったのだと思います。今後は各々が自主的に動く環境であるべきだと感じており、そのひとつとして西村の仕事を引き取ることができればと。
FCCテクノには、既存の事業を手堅く続けている人と、新事業に取り組む人が混在しています。もちろん皆が同じ方向を向くのは難しいし、そうすべきではないとも感じます。進みたい方向を自ら定め、迷う場合は折り合いを付けられるような環境を整えたいですね。
そのためには会社の人事制度や施策をある程度オープンにすべきだと考えています。私自身、入社後の面談を通して、社内にもいろんな思いを持つ人がいることがわかりました。
それぞれの思いを胸に刻みつつ、人事制度の改定に取り組んでいます。
西村:私は「差が出ること」が健全だと思っています。20年分の変革を2年で行うような再生段階では、マネジメント業務を全て私に集約しました。方角を定めてドライブをかけるのが目的です。
一方で、細かな情報は「にしむら通信」で発信してきました。長い時は100行にわたるメッセージ配信を、就任以来毎日続けています。再生のためには、そこまでやる必要があったんです。
ただ、私一人で引っ張っていては事業の凹みを元に戻す以上のことはできません。ここから先は、私以外の人に抜本的に委ねる必要があるんです。理念ある組織が私を引っ張るような形を目指しています。
進むべき方向へのアプローチを多数決で決めて、各々が自立して進んでいく。そのような組織作りはチャレンジであり、何より楽しみです。
とにかく毎日打席に立ち、フルスイングで剛速球に向かい合う。そのフルスイングの先にこそ未来があります。若く意欲のある人に打席を提供していくのが私個人のミッションです。その結果、私を超える経営者がどんどん生まれると、福岡で当社を経営する意義が生まれていくように思います。
試行錯誤の先に見えてくる新しいFCCテクノのカタチ
――リグロースに向けて試行錯誤中のFCCテクノ。その正体は何だとお考えですか。
緒方:再成長とはいえ、私たちは必ずしも事業規模を拡大させたいわけではありません。システム開発も手がけているので、エンジニアを大量採用して売上を上げようとすればそれも可能です。でも、請負開発の延長やエンジニアの派遣は、私たちが目指す「生きる力をつける」にはそぐわないのではと。
ではどういう事業がいいかと考えると、お客様のありたい姿の実現をお手伝いできるように、しっかり入り込んで解決に向かって伴走する。その手段の一つとしてデジタルがある。利益を出しながら成長させるにはどれぐらいの規模であるべきか。選択肢がある分悩ましいですね。
通底するのは職員一人ひとりが「生きる力をつける」こと。職員の成長を無視して会社が拡大する路線は選びません。こういった考え方をどうビジネスモデルに落とし込むのかが、リグロースにおける根幹のテーマになりそうですね。
現在策定しているCIが定まれば、見えてくる景色があると思います。
仲田:CIの議論はたしかに右往左往していますが毎回前進を感じており、私はあまり悩みやモヤモヤは感じていません。抽象的な概念を深掘りしたり言語化したりするのは、やっぱり楽しいですね。
再生局面では、徹底的な合理化・簡素化による経営の効率化を突き詰めてきました。ここから先は職員一人ひとりの意識をターゲットにした変革と言えるでしょうか。合理的に進まないからこそ面白く、難しく、進歩が見られた際の喜びもきっと大きなものになると思います。
短期的な成果には結びつかないかもしれませんが、職員一人ひとりの小さな進歩の積み重ねが思わぬ形でバリューになり、長期的な成長に繋がっていく。組織としての成長が喜ばしいことは言うまでもありませんが、なにより職員一人ひとりが「生きる力をつける」ことを体現し、しなやかな人生を生きてほしい。このようなFCCテクノの考え方がうまく循環するような組織にしていきたいです。
中元:これまでのFCCテクノを踏まえつつ新しいことを始めようとしているところに難しさがあるのではと感じています。60年あまりの歴史と支えてくれた人たちを尊重しながら新たな指針を作るからには迷走もしますし、一方でそれは優しさの表れでもあるなと。
「とにかくこの指針についてきてください」で終わる話かもしれません。でも、せっかく皆がFCCテクノに集っているのだから、皆が新しい一歩を踏み出せるようにしたい。難航してはいますが、絶対に必要な議論ですし、ショートカットはしたくありません。皆が着地できるポイントがどこかに必ずあると思っています。
西村:そらく私は来年も再来年も、「迷っている」と答えるだろうと思います。
実は最近、「戦略を定めない」ことをテーマにしていて。人に組織と戦略が従うという考えだと、私たちは福岡で私たちに合う人たちと事業を展開し、仕事を進めています。相手に対して何にでもなれるのが私たちSIerでありコンサルタントです。
それよりも私の価値観は「仕事と人生を分けない」。限られた人生の貴重な時間をどう使うかを、きちんと考えたいんです。
「8時間自分を犠牲にして働き、別の8時間を有意義に使いたい」という考えは、前段の8時間を捨てている時点でワークライフバランスが充実しているとは言えないのではないか。生きる時間全てを余すことなく有意義に使い切りたいと考えるようなわがままな人に、FCCテクノに集まってほしいと考えています。そういう人たちが集まれば、事業は何でもできると本気で思っているんです。
人が組織と戦略を作ると考えています。私たちの考え方に賛同する人が増えれば会社は大きくなり、そうでないならば縮小していくでしょう。故に、私たちは、来年も再来年も迷っていると思います。
ひとつ言えるのは、FCCテクノは変わり続ける会社であるということです。ある意味、明確な会社の定義づけを超えているのが、FCCテクノの特徴なのかもしれません。
<編集後記>
西村さんの代表就任から2年。たゆまぬ変革をつづけながら、「リグロース」へと向かうディスカッションはまだまだ止みません。会社の在り方を常に、真摯に追及し、「FCCテクノで働くということ」について真剣に語り合う。コミュニケーションの熱が伝播し、ひとりでも多くの方にこのユニークな魅力が伝わることがYOUTURNの願いです。
今後もYOUTURNブログでは様々なコンテンツを通じ、移住転職に向けた情報収集や思考整理に役立つ情報をお届けしてまいります。